「はぁっ、はぁっ、しつけっつーの!!」

バンエルティア号に、バタバタと走り回る騒音が響き渡る。アンジュやチャットなどから、走るなと怒号が飛び交うがそんなものに構っていられない

現在、ルークは逃亡中である

きっかけなど、もう忘れてしまったが、奴らが自分の貞操を狙っているのだけは、否が応でも分かった。毎日毎日、ルークの元に来ては好きだの愛してるだの、自分のモノになれだのと告白をされる。最初は冗談や罰ゲームの類だと思い、全く信じていなかった。軽い返事をしたり、時には怒ったりしていたのだけども。セクハラ紛いのことをされて、やっと薄かった危機感を持つようになったのである

物陰に隠れて、数分後に奴らの足音と声が聞こえてきた

「あれ〜?ルー君、どこ行ったのかね?」
「はぁ〜、このオッサンと探すとこが同じなんて悲しいけど、ハニーの為なら仕方ないか」

レイヴンとゼロスである。ルークにしたら、危険度No.2だ。あ?一番は誰かって?んなもん、あの鬼畜眼鏡に決まっている

ガイも最近はアッシュも違う意味で危ない気がするが

「ここにはいないみたいね〜」
「早くしないと、あいつらに先越されちまうな。今行くよ、ルーク様〜」

やっと違うとこに行ってくれたらしい。足音と声が遠くなった。ホッとひと息ついた、その時だった

「なーにしてんだ、お坊ちゃま」
「ぎゃああああああ!?って、大罪人じゃねぇか!!お、驚かすんじゃねえっつーの!!」

背後に現れた黒い人物に思わず大声を出してしまった。あいつらの誰かと思ったのは仕方ないだろう。今まで隠れていたんだし

そんなルークに目を丸くしていたユーリだったが、すぐにいつもの意地悪い表情に戻った

「いや〜、モテる男は大変だな、お坊ちゃま」

ニヤニヤと不敵に笑う奴が、物凄く腹が立つ。他人事だと思いやがって。同じ思いを味わえばいいのに。自分よりも、よっぽど男受けしそうだというのに

などと、若干失礼なことを考えているとユーリはルークの頬を力強く引っ張る。痛い痛いと泣き叫ぶルークに、ユーリは口は笑っても目は笑っていない表情で見つめていた

「今、すっげぇ腹立つこと考えていただろ」
「いひゃい、いひゃい!!ひゃんあえてらいからはなしぇ!(痛い、痛い!!考えてないから離せ!)」

何で分かったんだ、こいつ。そんな疑問よりも、頬の痛みが尋常ではない

涙目で許しを乞うと、ユーリの動きが少し止まった。どうしたのかと訊ねる前に、ユーリは手を離した

だが、自分を見つめるユーリの真剣な表情に、何故か目が離せない。近付いてくる顔を、どうしてか避けようとはしなかった

「今、こっちからルークの声が!!」
「クソ、あの屑どこ行きやがった!?」

ガイとアッシュの声に、二人はピタリと止まった

「……こっちに来い!」

ユーリに抵抗する間もなく、腕を引っ張られて更に奥へと進んでいった

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