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スヤスヤと気持ちよく眠る相手を見て、一体どれくらいの人間が容赦なく起こせるだろう。もう登校時間に迫っているなか、ピオニーはベッドで布団を蹴飛ばして眠る幼なじみを見て本気で思った
「ルーク、起きろ」
このままでは本当に遅刻してしまう。ピオニーは本格的にルークを起こしにかかった
「うう〜ん……あと5分……」
寝起きが弱いルークは、いつもこれで。結局遅刻ギリギリになってしまうのである
「しょうがねぇなぁ……」
ピオニーはニヤリと不気味に笑い、ルークの耳元に顔を寄せる
「10秒以内に起きねぇと、食っちまうぞ」
10、9、と数えていると全く起きる気配がなかったルークの瞳がパチリと開いた
「3、2……と、惜しいな。あと少しで食えたのにな」
半分冗談。半分本気でそう言うとルークの顔が面白いくらい髪と同じ朱色に染まった
「ピオ兄!!な、なんつー起こし方すんだよ!?」
「おかげでばっちり目が覚めただろ?ほら早く準備しろって。マジで遅刻するぞ」
「〜〜〜〜〜〜っ!!ピオ兄のバカ!バカ、バーカ!」
ベーっと舌を出して、部屋から出て行くルークはまるで子供である
ドシドシと音を立てて階段を下りていくのが、部屋にいても、よく分かる
「はぁ……まだまだ子供か。そんなんだから、まだ手が出せねぇんだよな」
いや、子供扱いでもしないとさっきの言葉通り実行してしまいそうになる
気が狂いそうなくらい、愛しいあの子を大切にしたいのに
「俺もまだまだ、ってか」
大人になっていないのは自分も同じか、とピオニーは苦笑した
そろそろルークの元に行かないと、更に怒らせてしまうな。ピオニーは一階にいるだろう幼なじみの元へと向かった
からかわれたと思っているルークは、ムスッとしながら黙々とピオニーが作った朝食を口にしている
からかったわけではないのだが、素直に反応するルークが可愛いのが悪いのだ。ムキになって反論してくるから、ついつい調子に乗ってしまう
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