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剣と槍がぶつかる金属音が、部屋に響く。本気でユーリを殺そうとしているジェイドと、仲間でありルークの従者ということから、どこか本気になっていないユーリ。互角の戦いが続く中、ユーリの一瞬の隙をついて、ジェイドは槍を肩に突き刺す
「ぐっ…!」
「ユーリっ!!」
勢いよく壁に激突したユーリに、ジェイドは止めを差そうと近づいていく
無表情で近づいていくジェイドは、本気でユーリを殺害しようとしている
「ダメだ、ジェイド!!」
だから、ユーリの前に立つことしか止める方法がなかった
「どきなさい、ルーク」
「嫌だ!これ以上、ユーリを傷つけるのは止めろ!!……頼むから、ジェイドのとこに帰るから……」
まだ、身体が震える。だが、ここで退くわけにはいかなかった。ユーリが傷つくのを黙って見ていれるわけない
「っかやろ!何言ってやがる!?そいつはお前に―――」
「……いいんだ。ごめん、ユーリ。本当にごめんな」
愛しい人を傷つけてしまった。もう、傍にいる資格などない
涙が出そうになるが、必死に堪えてジェイドの元へと向かう
「いいでしょう。ただし、二度目はありませんよ」
「……あぁ、分かってる」
ふらつくルークを支えながら、ジェイドは部屋から出ていく
「っく、待て!ルーク!ルーーーーク!!」
後ろから聞こえるユーリの悲痛な叫びに、ルークは振り向かなかった。ここで振り向いてしまったら、ジェイドがどんな行動に出るか、予想がつかない
「一体、何の騒ぎですか!?」
「こ、これは…!ユーリ、無事です?すぐに回復しますね」
角を曲がろうとした時、チャットとエステルの声が聞こえた。それに安堵する。これで、ユーリは助かる
だが、ルークを守れなかったユーリとしたら悔しくて仕方ない
エステルによって傷は癒えたが、心は何一つ晴れない
「な、な、な、な、な、何なんですか、これは!?ボクのバンエルティア号が―――――!?」
チャットの泣きそうなくらいの悲痛な叫びは、艦内中に響き渡ったという
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