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一方、ルークは物凄く苛々していた。あからさまな態度に、誰一人として近づく勇者はいなかった
「ちっ!」
思いっきり舌打ちをして、ルークは教室を飛び出した。行くとこなどなかったが、あのまま教室にいるのは益々気分が悪くなる
婚約者など、冗談ではない。どこの誰かは知らないが、そんなもので自分の人生を決められるなど認めない
この苛々をぶつけるものがなく、ルークは廊下のど真ん中で「あーーー!」と叫びながら、頭を盛大に掻く
「やれやれ、一人で賑やかな人ですね」
そこに、今世界で一番会いたくない奴が現れた。ルークは嫌そうに目を合わせる
「そんな嫌そうな顔をしないで下さい。私の心はガラスのように脆いのですから」
胸を押さえて、儚そうに言うジェイドにルークはここぞとばかりに叫ぶ
「防弾ガラスの間違いだろーが!!」
ルークのツッコミに、周りにいた全ての生徒達が一斉に頷く
「おやおや、傷つきますねぇ」
「どこが傷ついている顔なんだよ!?」
全然そうは見えないジェイドをルークは大嫌いだった。いつもからかわれて遊ばれる。いつだったかは嘘を信じて騙されたこともあった
それ以来信じないようにしているのに、また騙されてしまうのだった
「おや、この顔が嘘をついているように見えますか?」
顎を掴まれ、キスでもしそうなくらい顔が近づいてくる。思わず頭突きをして、即座に離れた
「―――っ。効きますね」
「な、な、な、な、何しやがる!?」
顔を真っ赤にして、壁に張りつく
ジェイドは痛む額を押さえて楽しそうに笑う
「いやですね。ナニを想像したのですか?それとも期待しています?」
「しねぇつーの!!」
ブンブンと音が出そうなくらい首を振るルークに、ジェイドは声を出して笑っている
「ククク…。本当に素直な反応ですね」
また遊ばれた、とルークが気付いても遅かった。いつもこうなってしまう
「るせー!!てめーなんか、大っ嫌いなんだからな!俺に近づくんじゃねー!!」
ドシドシと音を立てて、ルークは歩き出した。それをジェイドは残念そうに見る。だが、すぐにどこかに歩き始めた
鬼畜でドSで嫌味な先生で有名なジェイドが、ルークの前ではよく笑っている。その事実を、ルークが知ることはない
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