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「クリスマス?」
少し顔を歪めながら、ルークは、あぁもうそんな時期かと思い出した
この時期は年末なども相まって、あちこちでパーティーだ、何だかんだとめんどくさい場所に駆り出される。第一王位継承権を持つルークは、是非自分の娘を嫁にと群がってくるから、大嫌いだった
「そう嫌そうな顔をするなよ。今年はギルドの皆と過ごすだろうから、違う意味で賑やかになるだろうけどな」
ガイの言葉に、ルークはあいつらなら嫌な気持ちにはならないと口には出さなくても思った。分かりやすいルークに、ガイは苦笑している
「ふーん、お坊っちゃんは案外大変なんだな」
ガイに用事があったユーリが部屋にいたのを、ルークは忘れていた。失言だったと軽く睨む
「はっ、大罪人には分かんねーだろうな!」
「そりゃオレは縁がねーからな。お坊っちゃんとは違って」
相変わらず嫌な言い方をするユーリに、口では勝てないのが分かっているはずなのに、つい負けじと言ってしまう
苛ついたルークは目の前の菓子をガツガツと食べる
「ヤケ食いか?ほどほどにしとけよ」
「うっせーぇよ!!てめーは一々うぜぇ―――……!」
まだからかってくるユーリに今日こそ引導を渡してやると意気込んだルークだが、突然胸に圧迫感を感じ、手で掴む
「どうした、ルーク?」
急に黙り込んだルークに、ガイは駆け寄った。すると冷や汗をかき、苦しそうに息をする姿に慌てだす
「おい、早くジェイドかアニーを呼んでこい!」
ユーリもただ事ではないと判断し、部屋の外にいた仲間に声をかける。バタバタと辺りが騒がしくなると、ルークは床に崩れ落ちた
「くっ、ぅぁ…っ!」
息も絶え絶えになってくると、ボフッと音がなって辺りが真っ白になる
二人が咳き込み、何も見えなかった視界が段々と鮮明になると、そこにいた筈のルークがいない
「ルーク…?どこだ、ルーク!?」
ガイが辺りを見渡すが、姿が見えない。だがユーリはルークの服がそこに脱ぎ捨てられているのに気付いた
「おい、あれ…」
ユーリが指差した服の塊がモゾモゾと動きだし、中からひょっこりと朱色の髪の少年が現れた。固まる二人に少年は首を傾げる
「うっ?」
その可愛らしい破壊力に、二人は崩れ落ちた
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