オオカミはどちら?A/クラミノ | ナノ


春の心地よさは徐々に薄れて、ジリジリと照りつける太陽に鬱陶しさを覚え始める。
深く呼吸をして、高原にある牧場へ向かう。意外と坂が急だし、最近こっちの方まで歩くことなんてなかったから少し足がしんどい。
高原の牧場へ出ると心地よい風が吹いていた。

「ミノリ、どこだ?」

いつもならすぐに見つかるはずの姿が見当たらない。
出迎えてくれたのは暑さに負けそうになっている大きな牛だった。

「お前たちも大変だな…」

オレの言葉が通じたのか分からないが、覇気のない声で返事をされた。


「クラウスさん!すいません、作物の水やりに時間かかってしまって…」
「いいや、オレも早く来てしまったからな」

夏のせいか白い肌は少し赤い。
鎖骨に流れる汗がなんだか色っぽい。…いや、別に変な意味じゃなく。

「ほんと汗がすごくて…すいません、汗臭いですよね」
「いや、オレもあんまり人のこと言えないからな。」
「えっ、そんなことないですよ」

ネクタイを引っ張られミノリと目線が合うと、彼女はオレの首に顔を近づけた。身長差がある分、オレが思い切り前屈みになっているが距離はもう数センチのところにある。
女の子らしい甘い香りと、柔らかそうな髪。突然の出来事に頭はついていかず、声も出ない。

「…ミ、ノリ…?」
「ん、クラウスさんいい香りです」

首元にミノリの吐息があたり、熱が顔に集まる。慌てて離れると、彼女はいうものように笑みを浮かべていた。

「クラウスさんどうしました?顔、真っ赤ですよ?」

自分でも分かるくらいの頬の火照り。真夏の太陽のせいなんかじゃない。
くすくす笑う彼女は小悪魔に見えた。




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