君の背中に決意と大粒の雨/レガミノ | ナノ




自分はなんて無力なのだろうか。
もしもっと頻繁にエッダさんのもとへ訪れていたら?もし、エッダさんの異変に気付いていたら?そんなことばかり考えてしまう。
街にも顔を出さず、牧場の仕事を終えたらすぐベッドに潜り込む。
そういえば最近あまりご飯を食べてないなぁ、でもあんまり食べる気にもならない。こんなんじゃレーガに怒られちゃうかな。
そんなことを考えていても頭の片隅にはエッダさんのことばかり。
まるで本当のおばあちゃんのように接してくれて、たくさんのことを教えてくれて。ああダメだ、また目頭が熱くなってきた。
こんなことをしてもあの人は帰ってこないというのに。

冬に入ってからずっと雨が続く。
まるで自分みたいだ、なんて自傷的に笑う。

どれくらい雨の音を聞いていただろか。うとうとしていたら、突然外からの控えめなノックが二回。
思わず心臓が跳ね上がる。布団から抜け出してドアの前に立つ。

「ミノリ…」
「…どうしたのレーガ」

声の主はレーガだった。

「街のみんながミノリのこと心配してるぞ」
「…うん」
「ちゃんとご飯食べてるのか?すぐに無茶するんだから、ちゃんと栄養を取らなきゃダメだからな」
「レーガ…」

ドアを開けずに話しかけてくれるのはきっとレーガなりの優しさ。
今はとても人と顔を合わせられるような状態じゃない。
扉に寄りかかりながらその場に座り込む。

「…エッダさんからひだまり牧場を受け継いだんだろ?あそこを今、素敵な牧場に出来るのはミノリだけじゃないのか?」
「っそれは…」
「エッダさんはきっと…、ミノリが元気で立派な牧場主になるのを望んでる。大丈夫、ミノリなら絶対に出来る。」

レーガの言葉が心に突き刺さる。それと同時に重かった心がふわりと軽くなった。私はただ誰かに大丈夫、と言ってもらいたかっただけなのかもしれない。優しかった、私のおばあちゃんのように。
…そうだ、エッダさんのためにも、私はここで立ち止まるわけにはいかない。

「それじゃあ俺は戻るから」
「あ…」

突然レーガがこのまま冬の雨の中に消えてしまうような、そんなあるはずもない気持ちに襲われる。
私は頭で考えるより先に扉を開いて、レーガの背中を掴んだ。
レーガは少しびっくりしたみたいだけど振り返らず、その場に立ち止まった。


「今だけ…少しだけでいいから…」
「うん」
「ちょっとだけ、背中貸してね…」
「…うん」


冬の雨は酷く冷たいけれど、目から溢れてくるものを隠してくれた



君の背中に決意と大粒の雨




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特定の言葉を使わずに書いてみようシリーズ。多分もうやりません!
涙という言葉を使わず他の表現でどうあらわせるか…正直私の語彙が乏しいことが露呈されただけですね…

ミノリちゃんはよく泣くけど、決して人前で泣かなければいいなあという話。背中はセーフです…!
エッダさんが亡くなること知らなくてすごいショックでした…。
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