角砂糖を紅茶に沈めて/クラミノ←レーガ | ナノ




※レーガ視点
※クラウスさん出てきません。




その笑顔が俺だけに向けられればいいのに、なんて考え始めたのはいつだったか。そんなことはもう覚えてないしもう思い出そうとも思わない。もう無駄な想いだからだ。
クラウスさんとミノリが一週間前に式をあげた。
招待状を貰った俺は端の方で二人を見ていた。彼女の、ミノリの心底幸せそうな顔は初めて見た。きっと彼女をあんな顔にさせられるのはきっとクラウスさんただ一人なのだろうと改めて痛感した。
そんなこと分かりきっているのに、

(俺は馬鹿だな…)

ちゃんと笑顔で拍手できていただろうか。二人の幸せを純粋に喜べているだろうか。肯定も否定もできない。なんて中途半端な気持ちだろうか。






「こないだは参加してくれてありがとう、レーガ」
「あぁ、素敵な式だったな」


久々にレストランに昼食を食べに来たミノリ。
料理を美味しそうに食べるところは相変わらずだ。



「クラウスさんとの新婚生活はどうだ?」

なんて聞けば分かりやすいくらいに頬を赤く染め、俯く。

「幸せそうで何より」
「…レーガがいっぱい相談乗ってくれたから」
「別に俺は何も…」
「あの時背中を押してくれたから、だから今の私があるの。ほんとうにありがとう」

言葉が出ない。最初は彼女に近づきたくて。クラウスさんが好きだと相談されたときもうまくいくなと少しだけ願った、本当は最低な男なのだ。
そう彼女に告げて困らせてみようか、なんてしょうもないことを思いつく。

(まあそんなことをする勇気も度胸もないんだけどな…)



ふっとひと呼吸あけて、手元で作っていた紅茶をカップに注ぎをミノリの前に出す。


「…これは俺からのサービス」
「え、いいの?」
「まあ結婚おめでとう、ってことで。たいしたやつじゃないけど少しだけいいやつを仕入れてみたんだ」
「いい香り…。あ、じゃあ」
「角砂糖1つ、だろ」
「さすがだね」


ふわりと笑う彼女に胸の奥がぐっと締め付けられる。我ながらあきらめが悪いとは思っている。でももうこの気持ちも、想いも消さなければ。時間かかりそうだな、なんて自分に悪態をつく。
思わずこぼれそうになる苦笑とため息を飲み込んで、持っていた角砂糖をひとつ紅茶に落とした。



角砂糖を紅茶に沈めて


失恋レーガさん
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