中指で髪を弄び | ナノ




※チハヤ視点

まさか付き合いたい、と思うのはアカリが初めてだった。最初はお互い慣れなくてどぎまぎしていたが、今じゃアカリの隣にいるのが一番落ち着くようになった。
でも最近アカリの姿が見えないから、少し心配になってきた。普段は迷惑なくらい足音を立てて厨房にまで来るのに。しょうがない、差し入れでも作って牧場に行こう。


牧場に行くといつも通り動物は放牧されていて、水遣りも完璧だ。釣りかどこか出掛けてるかもしれないが、その時はメモと差し入れを置いておけばいいだろう。

「アカリ、入るよ...!?」

ノックをして入ると、アカリが床に倒れていた。

「アカリ!?どうしたの!?」

慌てて体を起こすと、すやすやと寝息が聞こえてきた。今すぐたたき起こしたい気持ちをぐっと堪え、アカリをベッドに運ぶ。

「ひっどいクマ...」

最近新しい動物を迎え、作物も育てる数を増やして忙しくなったとは言っていた。でもまさかここまでとは...。クマをそっと撫でるとアカリは眉をよせていた。髪の毛を掬って中指でくるくると遊ぶ。

「...いつもお疲れ様」

普段は面と向かって言えないから、ここでいい逃げをしよう。普通の女の子なら、嫌になるような仕事の量なのに彼女は絶対に逃げない。一見しっかりとしてるようで実はドジで、いつも笑っていて、だから僕は

「...君に惚れたんだろうね」

まだ眠っている彼女の頬に唇を落とす。

「じゃあね、アカリ」

眠ってる彼女に言って家を出る。
テーブルの上に置いたオレンジケーキ、いつもより上手く出来たからきっと美味しいだろう。誰よりも美味しそうに食べてくれる彼女を想って作ったから。その顔を思い浮かべれば今からの仕事も頑張れそうだ。大きく伸びをして、牧場をあとにした。


中指で髪を弄び





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