ひとりで鍋をしていたのを見て、さすがに哀れになってらしくもなく鍋なんて作ってしまったけれど、少しでも情けなんてかけた自分がバカらしくなってきた。
人、ラブ!俺は人間が好きだ!愛してる!とはコイツのお決まりのせりふだが、私はその言葉を聞く度に軽蔑と哀れみを感じるのを禁じ得ない。
所詮彼は誰かの愛を求めているにすぎないのだろう。
誰からも愛されないけれど、俺はこんなに皆を愛しているんだから、皆も俺を愛するべきだ、と。
けれど、彼は知らないのだ。誰かに愛してもらうためには、「皆」ではなく「誰か」を好きにならなければならないということを。人間という皆に愛を注ぐ限り、彼を愛する人は現れないし、もし現れたとしても彼はそれに気づけないのだから。
だけど、彼がそのたったひとりの誰かを見つけたら、この傍迷惑な性格も変わるのだろうか。そして、ここに私の居場所なんてなくなるのだろうか。
それでもいい。
誰でもかまわない。
彼が「人間」という名前ではなく、誰かの名前を呼ぶ日まで。
それまでもう少しここにいてやろう。
そんなことを考えながら、いつもより少しだけ嬉しそうに鍋を口に運ぶコイツを眺めていた。
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おまけ