クラウドとユフィ







ライフストリームの光が、アタシの髪を巻き上げる。
そのたびに視界が蒼緑がかって、足元が掬われそうになる。



天敵ことセフィロスが待つ最深部まで、もう距離がない。


隣には、レッドの真剣極まりない表情がある。決戦が目前にまで迫り、緊張が張り詰めているのか、鬣が逆立っている。


アタシだって同じ。

岩石の階段を一段ずつ降りていくにつれて、膝が震えを伴っている。

歯をくいしばって、震えを抑えて、また一段降りる。

胸の中をぐるぐると駆け回るモノを吐き出すように、深呼吸をする。


ライフストリームの流れる音、遠くに残った仲間達が戦う音、大空洞のモンスターが蠢く音。


色んな音が渦巻く中に、アタシの息は消えていった。

はずなのに、ソルジャー並の聴覚はそれすらも捉えていて


目の前の金色が振り返ってきた。

蒼く緑がかった光が金色を揺らして、幻想的な色合いを生む。


綺麗


状況が許してくれるのなら、思わずそう言ったかもしれない。
どうした、といういつもの言葉も、耳には入ってこなくて。



アタシはただ、ウータイの誇りを取り戻したかった。
観光地のようにまで成り下がってしまった故郷を、生き返らせるために。



咆哮が、耳を叩く。


金色は、一瞬でアタシから遠ざかってしまった。



マテリアを沢山持って帰れば、誇りがまた満ち溢れるって。

アタシ自身も強くなれるんだって。

そう信じて。



アタシじゃ持つことすら叶わない大剣を悠々と振り、相手を翻弄する。

それすらも華麗なモーションで。



そして、アイツに出会った。

半ば拾われるような感じで、アイツの旅についていった。


綺麗な二人の姉ちゃんは、いつの間にかアタシの一番の自慢になって、

オッサン達とは、いつの間にかダチのように笑い合えて、

レッドとなんかは、「きょうだい」みたいになっちゃって、



興味ないね、が口癖で、
冷血漢で、
不器用で、
無駄に強くて、
いやに綺麗で、
少しだけ優しい

アイツはいつの間にか、アタシの視界から離れなくなった。


お互いに嫌味ばかり言い合っていた。
子供扱いされて、イライラした時も沢山あった。
自分の憧れの姉ちゃんには敵わなくて、辛かった。




でも、時々見せる、不器用で小さな笑みが、すごく優しくて。
髪はぐしゃぐしゃにされたけど、撫でてくれた手は温かくて。
ピンチの時は、絶対助けてくれて。


嫌味なやつから、大好きな人になった。





蒼い瞳がいつも追っていたのは、淡い桃色の可憐な花。



わかってるよ



アタシの憧れの花は、希望のかけらを残して散ってしまった。



アイツとアタシの目の前で


今でもきっと、アイツは散った花びらを探し求めている。


だから


アタシを好きになってくれなくてもいいよ


アイツの隣にいるのは、きっとアタシじゃない


でも、それでもかまわない



滅びようとする世界に光を与えた彼女のために

この先あの蒼を見れなくなったとしても、後悔しないために



アイツが何にも囚われずに笑っていられるために



アタシは戦う。



そして、アイツと生きて帰ってくる





不安定な岩場を蹴り飛ばして、右手に強く握った不倶戴天をぶん投げる。

それは鋭い弧を描いて、骨で出来たドラゴンの首を跳ねた。


いきなりの強烈な援護に、アイツが目を丸くして振り返る。
緊張の拘束が一瞬で取っ払われて、自然に頬が上がった。




「アンタは絶対に死なせないよ!
アタシのマテリアが懸かってんだからね!!」



本当に、ひねくれた口だと思う。
素直に死なないでとは言えないものか。



だけどアイツはそんなアタシに


ユフィらしいな


そう言って、笑った。




ありがとう


大好き


言葉は、胸の奥に秘めたまま。



2012/03/26




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