ランバダとレム




何てこいつは無防備なんだ

……100年前からそうだが



オブジェ野郎達から離れて、適当なエリアに入る。

さっき助けた部下の腕は離さないままに。


「あ、あの…っ、ランバダ様っ」

やけに切羽詰まった声で俺を呼ぶ。
目だけやると、レムは少しだけ視線を落として言った。



「俺の……って、どういう…こと、ですか」



しばし、俺の思考が止まる。


そういえば、言った。
こいつの身体を引き寄せて、オブジェ野郎に。

こいつは、 俺の だと。
それは、思わず零れ出た、本音だった。


「……ランバダ様?」

レムが、いつの間にか顔を近付けていた。
躊躇いはないのか…。
近い顔と身体に、気恥ずかしい思いを覚え、掴んでいた腕を離す。


「……、俺の“部下”だ」
「部下……」


部下程度の思いなら見捨てた。
……本当は

「そう、ですか。そうですよねっ!!」

彼女は、少し明るく笑うと、黙りこんでしまった。
すると、不思議に沈黙が湧く。
こんな状況では、素早い話題の切り替えが賢明である。
だが、俺もレムも、話術には長けていない。

漂う気まずさが俺を、おそらくレムをも襲う。


「あ、あの、ランバダ様!!」

「ぉ、おう」

沈黙を突然に破られ、思わず間抜けな声が出てしまった。

「ランバダ様は、何故ボーボボさ…、ボーボボを倒そうとするのですか?」

形の良い唇が、他の男の名を綴った。
胸の奥で、小さな何かが焦れる。

「俺の真拳を破ったんだ、屈辱的に倒さないと俺の気がすまない」

自分の声音には、思った以上に刺々しい響きがあった。

レムは、すこしだけ残念そうな表情をする。

「…………何だ」


「いえ…、ただあの人は……私を、理解してくれた、から……」


すこしはにかんだ表情。

それは、引き金には十分だった。


「ランバダ様……?」

「あの男の方がお前を理解してる、だと?」

「あっ、いえ、ランバダ様だって……ッ!!!?」

細い肩を鷲掴み、その辺の壁に押し付けた。
細く噎せる息は無視する。
顎を指で捕らえ、視線を合わせる。


「お前は、俺よりあの男を選ぶのか?」

「ち、ちが……」

「お前を理解してくれるから?」

口を突いて出る言葉。
それは鋭い刃となって、彼女を傷つけていく。

怯えが、雫石となって彼女の瞳から落ちる。

「だから倒して欲しくないと?

………、ふざけるな……ッ」


迸る感情が胸を焼く。


驚きと、怯えとで荒れる吐息も、自分に向けられた眼差しも、すべて俺の中へ閉じ込めてしまいたくなった。


「ラ、ンバ………っ!!」


半ばぶつけるように唇を塞いだ。

反射的に離れようとする身体を強く引き寄せる。

追い討ちをかけるように、深く口付けた。
強く、長く、貪るように。

唇から零れる吐息が、限界を訴える。

「……ん…っは…!!!」

強く肩を突き飛ばされ、唐突に距離が開く。


うっすらと紅い痕の残った肩は、荒い息で揺れている。


「……半端な覚悟の部下など、足手まといだ」


そう残して、エリアの出口へ向かう。





俺をここまでさせたのは、ただのエゴイズム。



2012/03/26




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