ランバダとレム






冷たい眼差しで私を見つめたあなた。
初めて会った時は遠い。
第一印象は、あまり良くなかった。

同じ、三世様へ忠誠を違う身として一緒に戦って
いつでも、彼は冷たい口調や態度で応えてた。


でも、
100年間のコールドスリープの時は、とても寂しくなった。

今思えば、
100年前から、あなたが…、




「ち、ボーボボめ…」

ギガが恨めしそうに舌打ちする。


「……おい、女が落ちてるぞ」


ハレクラニが軽々と拾い上げたのは、白髪の女、レムである。


「ぐかぁー……」

ハレクラニは大口を開けて爆睡するレムを一瞥したのち、ギガへと放った。

「私は女に興味はない。
これは女好きの貴様にやる」
「おっ、結構いい女じゃん♪」

レムをつまみ上げ、値踏みするようにその顔を覗く。

「……んぁ…?ここは…っ!!!?」


目が覚めると、目前には明らかチャラい笑いを浮かべた見知らぬ男。

「目ェ覚めたじゃん♪」
「は、離せッ!!」

レムの細身の腕ではギガの剛腕ともとれる腕は外れない、と思われる、が。


人差し指、中指。
その二本で、いとも簡単に筋肉質な右手は降りた。

「爆睡真拳、寝拳!!」

水色がかった髪を逆立て、ギガを見据える。

「へぇ、真拳使いか。
結構やるじゃーん?
おとなしいのもいいが、こんなタイプも悪くねぇな…」

鋭い目に怯む様子もなく、ギガは心底楽しそうに口を歪めた。


「お前、俺の女になんねぇ?」
「はっ?100年後の雑魚なんか興味ねーよ」

細い腕を組み込み、一蹴する。

雑魚、という単語に紫の髪の奥が反応した。

「…雑魚、だぁ?お前ごときに俺様を見下すんじゃねえよ」

ぎり、と音が聞こえるほどに、二つの拳が合わさる。
それが離れた時、拳の間にレムの人形、背後に奇妙な生物が現れる。


「な、何だこいつら…ッ」

「雑魚かどうか、その体で確かめてみな…ッ!!!
オブジェ真拳ッッ!!」


人形が握り潰され、生物が体に絡み付く。
体は粘土のように撓り、身動きがとれない。

「あ、ぐぁ……っ」

必死に開いた視界には、意地の悪そうな顔。


100年前の毛狩り隊隊長が、情けない

自分は、布団として眠らせることは愚か、こんな奴も倒すことも出来ないのか


私はただの、落ちこぼれ



身体が抵抗の力を失ったその時、まとわりついていた生物が硬化した。
一瞬にして、正三角形の板となって崩れていく。

不快感から解放されて、腕を強く引かれた。


「えっ……?」


何が起こったのもわからず、顔をあげるとそこには

「ラン…、バダ…様…」

黒髪の先に覗く鋭利な眼差し。
強烈であり、凛々しくもあるその眼光は100年経ってもなお変わらない。

「てめぇ…、俺様の獲物に何しやがる」
自らの真拳を破られたのが相当気に食わないらしく、ギガはランバダを睨み付けた。

黒光りする瞳を細め、ランバダは口の端を上げる。

「貴様の…?ふざけろ」

そして、レムの身体を引き寄せ呟きに等しい音量で言った。


「こいつは、俺のだ。貴様になど渡さない」


今…何て……!!!?


その言葉に、心臓が警報を放った。
一瞬にして破裂寸前になる。
意識が、果てしなく遠くへいってしまった。


「貴様らとつるむのはここまでだ」



遠退く意識に残った最後の言葉は、私に向けられたものではなかった。





こんなんじゃ心臓がもたない!



2012/03/26




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