ナメ郎とポコミ 「なめーっち☆」 「ぐはっ!!!」 背後からの衝撃に、膝が崩れ落ちる。 「もー、なめっちったら大げさなんだからぁ」 「ポコミてめ…っ、ふ、ざけん」 「あ、そうそう。ポコミなめっちに用があって来たんだよ」 話 を 聞 け !!! 怒鳴りたい気持ちは、咳となって空気中に散る。 「お返しちょうだい!!」 「はぁ?」 こいつに何かもらった覚えも無ければ、借りもない。 「……んだよ、それ」 「ちょっとなめっちー、バレンタイン覚えてるぅ?」 バレンタイン 「…………忘れやしねぇ」 忘れはしない、決して。 外見だけで決めつけてはいけない という一般常識がある。 しかし、常識など、この少女の前では無意味である。 ポコミが渡してきたそれは、外見だけで全てを悟らせた。 テレビで全国放送されようものなら、間違いなくモザイク必須。 既にチョコレートの域を超えて、最早謎の生命体である。 内面(味)など知りたくもない、というか知ってはいけない。 「そうっあの忘れられないほどポコミの愛がこもったチョコレートだよ♪」 「んなわけあるかああッ!!!あれのどこが『愛』だ!!!!」 あの時ほど人間“しか”かかしに見えない自分の目を恨んだことはなかった。 「あれがポコミなりの愛情表現なのーっ なめっちに食べて欲しくて頑張ったのーっっ」 手足をバタバタ振って、頬を膨らませる。 子供かよ……いや実際子供だった なめっちに食べて欲しくて頑張ったの ふと、さっきの台詞を心中で思い返した。 ぶーっ、とわざとらしく拗ねた声に、ため息一つで一蹴する。 ポケットに手を突っ込んであさる。 「おい」 頬を膨らませたまま振り向くポコミに、飴玉を一つ放り投げた。 「わっ、」 「やる」 愛情表現 おかしすぎるチョコがこいつなりの表現 ならば 飴玉ひとつが、俺なりの愛情表現 (ぜっっったい言ってなんかやら「ありがとーなめっちーっっ☆」ぐはっ) 2012/03/26 |