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「#エロ」のBL小説を読む
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 屋敷の中を歩いていても物陰から突然斬撃が飛んで来たり、足元がぐつぐつに煮え滾ったり、戯れに吸収される事もない。何これ素敵。出されるのは手間のかかった美味しい食事だし、お風呂だって綺麗だし、ベットはふかふかだ。もう最高。自分が今までどれだけ人間らしい生活じゃあなかったのかが嫌でも分かる。いや本当に。
 顔を覆って「幸せ…」と呟けば、私のサバイバルな生活を知ったジョセフさんとシーザーさんが若干引いていた。うんうん分かるよ、私も引いてるから。

「お前、相当苦労してたんだなァ…」
「私もそう思います」
「ずっと此処に居れば良い。そうすれば、俺達が必ず守ってあげよう」
「おう、それが良いぜ」
「し、シーザーさんッ…ジョセフさんッ…!」

 優しい!!優し過ぎる!!シーザーさんはほろほろと涙を流す私の頭を撫でてくれた。人ってこんなに…温かいんだね…。此処の屋敷の人たちは皆優しいから、余計にしみじみとしてしまう。
 ――ところで、私の目の前にいるこのジョセフさんだが、私は会う前から彼の事を知っていた。正確に言えば、『未来のジョセフさん』を知っているのだ。彼は未来では私の幼馴染である仗助のお父さんで、日本に滞在していた間に何度か話した事もあった。あの時は、まさか若いジョセフさんと会う事になるとは思わなかったけれど。

「(うーん…やっぱり似てる、よなァ…)」
「…あのォ〜、なまえちゃん? 俺の顔に何かついてんの?」
「え?…ハッ!!ご、ごめんなさい、つい…!」
「ははァ〜ん、まさか俺に惚れちゃったァ?」
「うっとおしいぞジョジョ」
「シーザーちゃんたら嫉妬しちゃって〜」
「どうしてそうなるんだこのスカタン!」

 まさか「貴方の息子さんと見比べてました」なんて言えない。曖昧に笑って誤魔化したが、ジョセフさんとシーザーさんがいつものように口喧嘩し始めたので、詳しく聞かれる事も無かった。この二人は何だかんだ言って良いコンビなんだよね。さすが相棒。そう言ったら「相棒なんかじゃあない!」なんて怒られたけれど。
 へらへら笑っているとリサリサさんが現れて、二人は途端に大人しくなる。いやあ、さすが師匠。それにしてもスタイル良いし美人だし強いらしい何処までも完璧な人だな――なんて思っていると、リサリサさんは二人を見据えて口を開いた。

「これから、貴方達二人に最終試験を行います」

 そういえば、シーザーさんもジョセフさんもカーズ達を倒す為に修行しているのだったか。私の頭を撫でて「行って来る」と笑った二人を見送っていると、頭の端にカーズ達の姿がちらついた。…早く、終わらないかなァ。一人になった部屋の中で、私はテーブルに突っ伏した。



「…暇だなァ〜。こっそり見学しに行こうかな…」