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 学校からの帰り、ばったりと承太郎さんに出会った。そういえば晴れて『スタンド使い』になったという事を言っていなかったと思い出し、私は「見て下さい承太郎さん!」という言葉と共に、『スタンド』を発現させる。
 私の腕の中に現れたテディベアを見て、承太郎さんが珍しく驚いたように目を丸くした。凝視されているのが恥ずかしいのか、戸惑ったように見上げてくるテディベアに、思わずへにゃりと笑みを零す。我が『スタンド』ながら、…か、可愛い〜〜〜。

「………なまえくん、そのテディベアはまさか…」
「はい!私の『スタンド』です!」

 ドヤ顔で答えてしまったが許して欲しい。経緯を話すと、承太郎さんは成程と頷いて聞いてくれる。私が『スタンド使い』に憧れていた事を知っている承太郎さんは、嬉しそうに話す私を見て小さく笑うと、「良かったな」と頭を撫でてくれた。
 へらりと笑い返した時だ。承太郎さんと私の間を遮るように、何かが突然目の前に現れる。ぎょっとして視線を上げると、筋骨隆々の彫刻のような人が私を見下ろしていた。…いや、人、というか、これはもしかして。

「………えっと、『スタープラチナ』さん?」

 おずおずと尋ねてみると、目の前の彼は答えるように頷いてくれた。ぱっと表情を輝かせた私に、『スタープラチナ』さんが一つ瞬きをし、ゆっくりと手を伸ばして来る。
 恐る恐るといったように指先で頬に触れられ、そのまま感触を楽しむように輪郭を撫でられる。表情は変わらないものの、確かめるような手付きに、何となく感情は察する事が出来た。

「…えへへ、やっと会えましたね、『スタープラチナ』さん」

 こそばゆさに小さく笑いながら言えば、『スタープラチナ』さんが距離を詰めて来て、私の身体をぎゅうっと抱き締めた。お返しとばかりに目の前の身体を抱き返すと、一拍置いて、静かに見守っていた承太郎さんが息を吐く。

「………やれやれ。嬉しいのは分かるが、少し控えた方が良いんじゃあないか」
「………あっ、すみません、つい………」

 承太郎さんの『スタンド』である『スタープラチナ』とハグしているという事は、間接的に承太郎さんとハグしているのと同じ事。すっかり忘れていた。何だか気恥ずかしくなって、一度『スタープラチナ』から離れようとしたのだが、がっちりと身体をホールドされている。
 なかなか脱出出来ず、承太郎さんに助けを求めるように視線を送る。承太郎さんは何とも言えない表情を浮かべると、帽子のつばを指先で下げ、「…おい、『スタープラチナ』」と窘めるように名前を呼んだ。――が、やはり『スタープラチナ』は離れないままだった。

「……やれやれ。控えた方が良いのは俺の方か…」
「で、でも承太郎さん、私暫くこのままでも全然良いんですが……」
「駄目だぜ。そうやって甘やかすと調子に乗る」
「え、ええ〜〜〜……」

 じゃあどうしろと。私の足元に居るテディベアもおろおろとしている。――それから『スタープラチナ』が渋々折れるまで暫くの間、承太郎さんと『スタープラチナ』の謎の攻防は続くのだった。