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 例によって「暇だ相手しろ」とのたまったカーズによって、出会い頭に鋭い刃に体を切り裂かれ、私は絶命した。もうほんと何なの?幾ら死なないとはいえ、痛覚はそのまま代わりなく作用する。死なずとも痛みは感じるのだ。
 そこのところを分かっていて敢えてえげつない方法でトドメを刺すのだから本当に性格が悪い。鬼畜だとか外道だとか、そういう言葉はまさにこの男の為にあるのだと思う。

「くそ…こんな…こんな理不尽な仕打ち…ッ」
「……なまえ?何をしている」
「ワムウさん!!」

 この数日間ですっかり聞き慣れた声が聞こえ、私は振り返る。自分でも面白いほど表情が輝いた訳で、ワムウさんは若干引いているようだ。だけどそんな事関係ない。私のオアシスはワムウさんだけなのだから。
 ワムウさんの元に駆け寄り、大きな体に抱き着く。やっぱり少し嫌そうな表情をしたけれど、いつもの通り、振り解くような事はしない。誰かさんと違って優しいなあ。そんな事を思いながら目の前の逞しい胸に頬をすり寄せると、ワムウさんは小さくため息をついて私の背中に腕を回した。

「!?えッ、ちょ、ど、どうしたんですかワムウさんッ…!?」
「……なまえ、すまないな…」
「えッ、なッ!?何がですか!?」

 ぎゅううっと抱き締められ、私は思わずパニックに陥る。だって今までこんな事無かった!!ワムウさんは私よりもずっと大きいので、私は包まれているようになっている。ワムウさんの顔が私の首筋に埋まり、吐息がかかって背筋が震えた。
 な、な、何これ、どういう事なの!?さっぱり訳が分からないが、体温がどんどん上がっていくのは感じられる。見事に耳の裏まで真っ赤になったところで、私は漸く異変に気が付いた。

 包まれていると言ったが、どうもこれは例えじゃあない。文字通りだ。文字通りワムウさんの肌に包まれて、そして、私の体がずぶずぶと飲み込まれている。ちょっと待てこれは、これは――吸収されているッ!!

「わ、ワムウさん、ちょッ…!?」
「……すまない」

 ワムウさんは謝りながらも吸収する力を弱めない。体の半分ほどがワムウさんと融合し始めた頃、何処からか「ぶふっ」と状況にそぐわない笑い声が聞こえて来た。視線を遣れば、エシディシが遠巻きに此方を見て肩を震わせている。そして私は理解した。
 これはエシディシの仕業に違いない。ワムウさんが逆らえないのを良い事に、私を吸収して来いとでも命じたのだろう。暇つぶしってか、あんの野郎…。

 スタンドを飛ばして一発殴りたいところだが、生憎私のスタンドは超近距離特殊型なので距離的にもパワー的にもそれは敵わない。というか、ワムウさんに殆ど吸収されてしまっているのでもはや意識も危ういところだ。――だけど。

「ワムウさん、私は復活するし、大丈夫ですよ?」
「……、ああ…」

 エシディシに何も出来ずにこのまま死ぬのは悔しいが、まあ今はこれを言えれば十分という事にしよう。復活した暁にはエシディシに全力で攻撃をふっかけてやるが。そして私の中で何かが切れた音がして、意識が真っ黒に塗り潰された。




「エシディシお前今回だけは許さんぞ!!絶対に許さんッ!!!」「ほーお、お前に俺が倒せるのか?ン?」「キイイイイイイ!!!」