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スピードワゴンに抱き着く


【スピードワゴンの帽子を被って後ろから抱き着くこと】


笑いながら被せられた帽子は見た目よりも少し重たくて、目元までずり落ちて来たのを慌てて手で持ち上げた。そう言えばこの帽子には刃物が仕込まれていたんだっけ。…あまりペタペタ触らないようにしておこう。
スピードワゴンさんに後ろを向いて貰い、準備は万端。しかしすんなりと行けないのが私である。タイミングを図りながら小さく唸っていると、スピードワゴンさんがふき出した。

「おいおい、そんなに緊張しねーでくれよ。こっちまで変な緊張しちまう」
「だ、だって、恥ずかしいんですよう…!」
「こういうのは勢いだ、勢い!」
「いやそんな事言われてもっ…!」

言い返してみたけれど、まあ確かにスピードワゴンさんの言う通りだろう。変にタイミングを気にするからいつまでも踏み出せない訳で、躊躇わずに一気に行くべきなのかもしれない。よし、やる、やるぞ…!!
ダッと駆け出し、勢い良く背中に抱き着く。半ばタックルのような形ではあったけれど、スピードワゴンさんは「うおっ」と小さく声をあげただけでしっかりと踏み止まっていた。手紙が消えた音を耳にして、私は直ぐに離れる。ウワアアアやっぱり恥ずかしい!恥ずかしいよおお!!

「こ、これで良いですよね…!?」
「おう。お前にしちゃあ上出来だな」

顔を真っ赤にした私を見て、スピードワゴンさんは僅かに苦笑しながら帽子を取り、優しく頭を撫でてくれた。