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露伴のヘアバンドを強奪する


【露伴のヘアバンドを強奪して一時間逃げ切ること】


露伴先生のヘアバンドを奇跡的に強奪したまでは良かったのだが、地獄はそれからだった。どうも私がヘアバンドを取ってからかっていると思っているらしく、何よりもナメられる事が嫌いな露伴先生はもう全力で私を追いかけて来ている。
おそらくヘブンズ・ドアーを使う事も辞さない考えだろうと思うので、私はとにかく射程距離内に入らないようにと此方も全力で逃げ回っていた。

「い、一時間とか、絶対、無理ィ…!!」

ぜえぜえ言いながら駆け回り、角を利用して露伴先生と距離を少し離したのを見計らって、建物の中に逃げ込んだ。死角になっている所に入り、壁に背を預けて息を整える。予想以上にキツい。
それから数分経った頃だろうか。大分息も整い、一箇所に留まっているのも危険だろうと考えた私は此処を出る事にした。外を覗いてみたが、露伴先生の姿はない。胸を撫で下ろして一歩踏み出した時だった。

「何だ、もう行くのか?疲れたならもっとゆっくりして行けば良いじゃあないか」
「ヒッ…!!?」
「僕も走り回るのには飽きてきたところでね…。そろそろ終わりにしたいんだが、君はどう思う?」
「ろ、ろ、露伴先生…ッ!!」

横にヘブンズ・ドアーを従えたままにっこりと笑った露伴先生に、私は全身から血の気が引いた。に、逃げられない。――おそらく、私はこの時の露伴先生の笑顔を一緒忘れる事は無いのだろう。