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ジョースター家にお泊り

■ ■ ■

 荒木荘からそう遠くないところに、承太郎くん達ジョースター家の面々が住んでいる一軒家はあった。広い庭に、綺麗で大きな一軒家。ぼんやりと眺めていると、承太郎くんが私の手を引く。

「誰かしら居るだろう。とりあえず上がれ」
「あ…、う、うん……」

 承太郎くんに促されるまま、彼の背中を追って家にお邪魔する。ぱたぱたと足音がして、廊下の先からひょっこり現れたのは、徐倫ちゃんだった。承太郎くんの後ろに居る私を見て、彼女は驚いたように目を丸くする。

「ヒヨリ?随分と珍しい組み合わせじゃない。どうしたの?」
「家出して来たんだとよ。…ジョナサンは居るか」
「リビングに居ると思うけど…って、何?家出って言った?」

 「コイツは頼んだぜ」と言い残して廊下を歩いて行ってしまった承太郎くんに、徐倫ちゃんが不思議そうに首を傾げる。それから、「ま、良いわ。とりあえず話聞かせて」と私の腕を引いた。慌てて靴を脱ぎ、導かれるままに歩く。
 通されたのは徐倫ちゃんの部屋だった。あまり物は多くなくさっぱりとしているが、化粧道具やオシャレな洋服があって女の子らしさも感じられる。そういえば誰かの部屋にお邪魔したのは随分と久しぶりだな、なんて思いながらぼんやり部屋を眺めていると、徐倫ちゃんがお茶を持って戻って来た。

「ご、ごめんね、突然お邪魔しちゃって……本当はこんなつもりじゃあなかったんだけど……」
「良いのよ。ヒヨリとはゆっくり話してみたかったし、良い機会だわ」

 気にしないで、とにっこり笑う徐倫ちゃんに、こちらもへにゃりと笑う。本当に良い子だなあ。お茶を差し出されつつ「それで、どうしたの?」と尋ねられ、私は一拍置いて話し出した。


***


「……なるほどね。それはまた何というか…」
「……怒られた事は何回かあるんだけど、あんな吉良さんを見たのは初めてだったから吃驚しちゃって……」
「まあ、そりゃあそうよね。今じゃあすっかり丸くなったもんだけど、荒木荘に住んでるのは元々極悪人しか居ないんだもの」
「そうなんだよね……なんかほんと、すっかり頭から抜けちゃってて……」

 よくよく考えてみれば、徐倫ちゃんの言う通り、荒木荘の面々は普通なら震え上がるような事をして来た人達ばかりだ。不死身な吸血鬼に究極生命体、連続殺人鬼、マフィアのボス、一部をピックアップしただけでもまあ恐ろしいラインナップである。
 それにしても、お茶を飲んでお茶菓子を摘みつつおしゃべりして、何だかすっかり女子会だ。内容はハードだけど。徐倫ちゃんはお菓子を咥えつつ、「それにしても、アイツら随分と過保護よねえ」と零す。過保護。……過保護、かあ。

「……なに?どうしたの、急に暗い顔しちゃって。やっぱり気になるの?」
「……うん。勢いで飛び出して来ちゃったけど、まずかったなって…」

 吉良さんの言いたい事というか、私の事をとても大切に思ってくれている事は分かるし、有り難いとも思う。吉良さんは私を心配して言ってくれていたのに、私は感情に任せて反論して、終いには強引に家を飛び出して来てしまった。
 ご飯の支度も掃除も全部ほっぽり出して来てしまったし、喧嘩して家出だなんて、まるで子供みたいだ。考えれば考えるほど気分が落ち込んで来てしまって、また目頭がじわじわと熱くなって来る。

「……ヒヨリ」

 ぐす、と鼻を鳴らしたところで、前から伸びて来た手に頬を包まれる。そのまま顔を上げさせられて、徐倫ちゃんと目が合った。

「そんなに考え込まないで良いのよ。意見がぶつかり合う事なんて良くある事じゃない。互いの事を思っている証拠だわ」
「……でも…」
「とりあえず、今日のところはもう忘れましょ!荒木荘の方にはジョナサンが連絡してくれたし、お互いに落ち着いてから顔を合わせれば大丈夫よ」

 泣いたら可愛い顔が台無しよ、なんて言って私の目元を拭ってくれた徐倫ちゃんに、私も頷く。これじゃあどっちが年上か分からないな。だけど、徐倫ちゃんのお陰で少し気持ちが軽くなった。「ありがとう」とへらりと笑ってみせれば、徐倫ちゃんもにっこり笑ってくれる。
 コンコン、とドアがノックされ、仗助くんとジョセフさんがひょっこりと顔を出す。私が来ている事を承太郎くんから聞いたのか、私の姿を見た二人はぱっと花が咲いたように笑顔を見せる。

「ヒヨリさん!本当に来てたんスね!」
「ヒヨリちゃん!久しぶりだな〜!」
「あ、えっと、お邪魔してます!」
「ちょっと、こっちは楽しく女子会してんのよ!男子禁制!」

 ぷりぷり怒る徐倫ちゃんに、ジョセフさんは「女子会っつー事は、女装したらオッケーって事?ちょっと待っててねん」と何やらウキウキして部屋を出ようとする。しかしそれより先に徐倫ちゃんと仗助くんが「テキーラはやめろ!」と声を揃えた。て、テキーラ……?

「っと、遊んでる場合じゃあなかった!メシが出来たんで呼びに来たんスよ」
「やだ、もうこんな時間だったのね。ヒヨリ、食いっぱぐれない内に行きましょ」
「あ、う、うん!……でもいいの?本当にお世話になっちゃって……」
「いーっていーって!やっとヒヨリちゃんに会えるってジョナサンも喜んでたぜ!」

 ちょこちょこと話に上がっているジョナサンという人は、ジョースター家のリーダー的存在らしい。どうもDIOさんとは並々ならぬ因縁があるようで、遡ると19世紀のイギリスで何やらあったようだ。随分と遠い話である。
 話は聞いていたけれど、実際に会うのは初めてで、少し緊張してしまう。そんな事を思いつつも徐倫ちゃんに背中を押され、私は三人と共にリビングへと向かったのだった。