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吉良とバイトの話

■ ■ ■

 色々と個性的な面々と暮らしてはいるけれど、保護者的な立場が誰かと言われれば、それは間違いなく吉良さんだ。特別な理由や事情が無い限りは、大抵の事は吉良さんに一番に相談している。だから、今回も吉良さんに相談してみる事にしたのだ。

「あの、吉良さん…今ちょっと良いですか…?」
「どうした?」

 不思議そうに首を傾げながら、「またDIOに何かされたのか?」なんてごく自然に付け加えられたので、思わず苦笑しながら首を横に振る。一番に話が持ち上がる辺り、流石DIOさんだ。吉良さんの正面に座って、指先同士をこすり合わせながら、「実は…」と口火を切る。

「…私、バイトをしたくて…」
「……………何だって?」

 そう、アルバイトだ。私はこの世界に来るまでは学生らしくアルバイトをして、お小遣いを稼いでいた。特に欲しいものがあるだとかそういう訳では無いのだけれど、まあ色々と思うところがあって、アルバイトくらいは始めたいと思ってしまったのである。
 吉良さんはきゅっと眉間に皺を寄せ、「…まさか、金を貯めてこの家を出て行くつもりじゃあないだろうな?」と声を低くした。「ちッ、違いますよ!」と慌てて否定してから、言葉を付け加えようと口を開く。

「その…私、以前は大学に通ってましたけど、今は通えてないじゃあないですか。まあ、今更無理なのは分かってますし、それは別に良いんです。でも、せめてバイトくらいはしたいかなあって思って…」
「…まあ、それは確かにそうだが…」
「…それに、携帯代くらいは払えるようにしたいし、そうすれば少しくらいは家計の足しになるんじゃあないかなって…」

 頬を掻きながら言えば、吉良さんは一瞬きょとんとしたように目を丸くした後で、そっと指先で目頭を押さえた。「なんて良く出来た子なんだ…」なんて言っている吉良さんに、大袈裟過ぎると思わず苦笑してしまう。

「そういう訳で…あの、バイト…許可して貰えますか?」
「……そうだな。きちんと連絡を入れるようにしてくれるなら、構わないさ」
「も、勿論です!」

 無事に吉良さんの許可が降り、胸を撫で下ろす。近所にあるコンビニがスタッフ募集の張り紙を出していたので、まずはそこに応募してみるつもりだ。以前働いていた事もあるし、時間帯は夕方で、週に二日ほどなので丁度いいだろう。ただし、アルバイトをする上で、一つだけ心配な事がある。

「…その、家事が多少出来なくなるのが気掛かりで……」
「ああ、それは気にしなくても良い。ヒヨリが来るまでは分担してやっていたからね」
「すみません…」
「謝る事じゃあないよ。それに、ヒヨリには色々と任せっぱなしだと思っていたところだったんだ、丁度良いさ」

 吉良さんはそう言うと、「家の事は気にせず、頑張っておいで」と頭を撫でてくれた。何だか本当にお母さんみたいだ。そう思うと擽ったくて、私はへらりと笑って返したのだった。