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ジョルノ


カーテンの隙間から差し込んでくる柔らかな日射しを受け、私は体を伸ばす。ベッドに背を預けて座って本を読んでいたのだが、ずっと同じ体勢でいたせいか体がすっかり固まってしまっている。ぱきぱきと体の節々から音がして、仮にも年頃の女子が出す音じゃあないなと密かに苦笑していた時だった。
――ぱさっ。何かが床に落ちた気がして視線を遣れば、床にはついさっきまでは無かった筈の黒い手紙が落ちていた。もう見慣れてしまっている自分もなかなか恐ろしいが、それよりも中身である。手紙の封を切り、中の便箋を取り出す。

【六原ユメコは今日の23時59分までにジョルノ・ジョバァーナの三つ編みを編むこと】――それが今回の命令らしい。とんでもない命令ではなくて良かったと安堵しながら、私は手早く身支度を整える。そして、彼の元を訪ねるべく家を出たのだった。


***


ジョルノくんは王様の事について知っているので、家を訪ねた時に理由を話せば、快く迎え入れてくれた。どうやら彼はティータイム中だったらしく、部屋には紅茶の良い香りが漂っている。
行きにお土産として買って来たプリンを渡せば、ジョルノくんは嬉しそうに笑って受け取ってくれた。その背後にぶわっと大輪の花が咲き誇ったように見えたのは、果たして私の幻覚なのだろうか。

「あの、ささっと終わらせるね。ジョルノくんは好きな事してて大丈夫だから…」
「ええ、分かりました。…でも別に急ぐ事はありませんよ。僕はユメコとお話したいですから、ゆっくりやって下さい」

彼はにこやかにそう言うと、既に結われている髪を解いた。軽く頭を振れば、きらきらと輝く金糸の髪が広がる。そういえばジョルノくんが髪を解いたところなんて見たことが無かったなあ。初めて見る髪を下ろした彼は、また普段と違う雰囲気に包まれている。今更だけれど、私よりも年下とは思えない。主に色気とかが。
ぼんやりとジョルノくんに見とれていると、彼は此方に背を向けて先程まで座っていたと思われる椅子に腰掛けた。「ユメコ?」と名前を呼ばれ、ハッと我に返った私は慌てて彼の元に駆け寄る。小さく笑われてしまって、私は思わず顔が熱くなるのを感じた。

「え、ええと…それじゃあ、失礼、します…」
「どうぞ」

妙に畏まってしまった私がおかしかったらしく、ジョルノくんは小さくふき出していた。もう、さっきから笑われてばかりだなあ。そんな事を思いながら、私はゆっくりと彼の髪に手を伸ばした。
前に流れている髪を後ろに持って来て、三つの束に分ける。彼の髪は女子の私でさえ羨ましく思うほど指通りが良く、糸のような柔らかい毛質をしている。シャンプーのCMにでも出られるんじゃあなかろうか。

「ジョルノくんの髪、やっぱり凄く綺麗だね。私なんかよりよっぽどさらさらだし、羨ましいよ」
「そうですか?僕はユメコの髪も綺麗だと思いますよ」
「…そ、そうかなあ…」
「せっかく綺麗な髪をしているんですから、たまにはアレンジしてみたらどうですか?僕と同じように三つ編みとか、大歓迎ですけど」

深い意味はないと分かってはいても、綺麗だとかお揃いだとか言われると何だか恥ずかしい。しかもジョルノくんはそういう事もさらりと言ってしまうから余計にそう思える。外国のスペック高すぎるよ…。顔が熱くなって来ていることに気がついて、慌てて頭を振って思考を飛ばす。
ジョルノくんと幾つか言葉を交わしている内に、三つ編みは綺麗に編み上がっていた。ヘアゴムで纏め、普段彼がしているように毛先は輪っかになるように結んだ。よし、完成。髪から手を離したと同時、テーブルの上の手紙が煙を残して消えた。

「終わったみたいですね」
「うん。時間取らせちゃってごめんね」
「いいえ、楽しかったですよ。…でも、一つだけ」

ジョルノくんが不意に立ち上がり、私の腕を引いた。目を丸くする私の背中を押し、彼は今まで自分が座っていた椅子に私を座らせる。困惑しながら名前を呼べば、後ろから伸びてきた手が私の髪を掬い、私が先程彼にしたように背中の方に流した。
長い指が首筋を掠め、密かに肩が跳ねる。な、な、何事!?内心でパニックになる私をよそに、ジョルノくんは慣れた手つきで私の髪を左右に分けた。あれ、これはもしかして…?

「次は僕の番ですよ」

後ろにいるので顔は見えないが、声色で何となく彼が楽しそうにしているのが分かる。時折首筋に触れる指に思わず反応しそうになるのを堪え、私はじっと終わるのを待った。人に髪をいじって貰うのなんて久しぶりだ。
「やっぱり綺麗じゃあないですか」なんて言われて密かに照れたりしていると、気が付けば綺麗なツインの三つ編みが出来上がっている。振り向くように言われて恐る恐る彼の方に顔を向ければ、ジョルノくんは満足気に笑みを浮かべていた。その達成感に満ち溢れた表情はどうしたのジョルノくん…。

「ベネ!とても可愛らしいですよ、ユメコ。これで僕とお揃いですね」
「お、お揃いだなんて、なんか恥ずかしいなあ…」
「恥じらうユメコも非常に素敵ですが、堂々と見せ付けてやれば良いんですよ」

だから、可愛らしいだとか素敵だとか、そんな事さらりと言わないで欲しいんだけどな…!!恥ずかしくて俯いていると、頬を撫でられた。「ひぎゃ!」なんて可愛らしさの欠片もない声を上げた私に構わず、ジョルノくんは綺麗な笑みを浮かべたまま私の手を握った。
――そういえば、何だかさっきの彼の言葉に違和感があったような気がする。「見せ付ける」とか何とか…?嫌な予感がしたのと、ジョルノくんが私の手を引いて歩き出したのはほぼ同時だった。


▼ 【ジョルノ・ジョバァーナの三つ編みを編む】 クリア!

「ちょ、え、何処に…?」「何処って、ブチャラティ達に自慢しに行くんですよ)」「!!?」


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