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トラウマ - 『曖昧』


主人公も杜王町にやって来る
四部突入if

靴のムカデ屋でのお話

 康一くんから連絡を貰ったという仗助くんと億泰くんに合流し、靴のムカデ屋へと向かった。康一くんは、承太郎くんは無事なのだろうか。焦る気持ちに反して、道のりは遠い。漸くお店に辿り着いたところで、爆発音が聞こえた。

「………え、」

 ヒュッと息が詰まり、一気に血の気が引いたのが分かった。地面に倒れている見知らぬ男性と、康一くん、承太郎くんの三人は、全員酷く怪我を負っていて、血だらけのまま動かない。一瞬で十年前のエジプトでの決戦の事を思い出して、足が地面に張り付いたように、その場から一歩も踏み出せなくなる。
 仗助くんと億泰くんが弾かれたように康一くんと承太郎くんの元に駆け寄る。まだ息はある、『クレイジー・ダイヤモンド』で治す、と慌ただしく動く彼らを、私はただ呆然と眺めているしかなかった。


***


 康一くんと承太郎くんは『クレイジー・ダイヤモンド』の能力で怪我を治して貰い、その場に倒れていた男性が探していた殺人鬼だと分かり、追い詰めたけれど見失い――あれよあれよと事態は展開していったけれど、私はどうも落ち着けなかった。心臓がまだ嫌に跳ねていて、息も整わない。
 漸く一段落着いたところで、承太郎くんが私の様子がおかしいと気が付いたらしい。「…どうした」と声を掛けられ、承太郎くんを真正面に捉えて、それで。ぼろ、と目から涙が落ちて、承太郎くんが珍しく目を見開いた。

「……どうした」
「……え、…あ、はは、…なんだろう、ごめんね、…ちょっと色々、びっくりしちゃったからかな…」

 承太郎くんが死んでしまったかと思って動揺した、なんて言えない。昔から無茶をする人だったけれど、承太郎くんが怪我を負っているのを見るのは未だに慣れないのだ。ましてや、あんなに酷い怪我を負って、血だらけで、突っ伏したまま動かない、だなんて。
 数十分前の光景が脳裏にこびり付いて、まだ心臓が落ち着いてくれない。涙もなかなか止まってくれなくて、私は動揺を悟られないように、「ごめん、多分すぐ収まるから…」と苦笑する。そんな私を見てか、承太郎くんが私の腕を引いた。

「……じょ、承太郎くん…?」
「……俺は絶対にお前を残して死なねえ。約束する。…だから、もう泣かないでくれ」

 引き寄せられた身体を、ぎゅう、と少し痛いくらいに抱き締められて、息が詰まる。承太郎くんにはお見通しだったらしい。敵わないなあ、なんて思いながら、私はぼろぼろと涙を流す。承太郎くんは何も言わず、暫くの間、私をずっと抱き締めてくれていた。

17.02.15


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