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甘え甘やかす - 『曖昧』


承太郎とのんびりする

(3部と4部の間くらい)

部屋に入ると、承太郎くんがベッドで眠っていた。ゆっくりと近づいてみるけれど、珍しく起きる気配がない。長い睫毛が顔に影を落としているので分かりづらいけれど、目の下にはくっきりと隈が刻まれている。何日も徹夜で論文に着手していたからだろう。
ベッドの脇でしゃがみ込み、そっと手を伸ばして承太郎くんの手に触れてみる。大きくて暖かい手に自分のそれを絡めて、きゅ、と握ってみた。そのまま顔を寄せて、まるで猫か何かのように、すり、と擦り寄る。

やっぱり、承太郎くんの手、好きだなあ。鼻先ですりすりと擦り寄っていた時だ。絡めている承太郎くんの指がピッと伸びて、私の鼻を軽くつまむ。

「んわ、…お、起きてたの…?」
「…ああ。誰かさんが随分と可愛い事をするからな」
「う、…ごめんね、起こしちゃって…」

構わない、と少し掠れた声で言った承太郎くんは、大きな欠伸を零して寝返りを打った。ベッドの上に空間を作ると、承太郎くんは私と手を繋いでいない方の手で、ぽんぽんとベッドを叩く。

「二度寝したいから、付き合ってくれ」
「……ん、喜んで」

少し恥ずかしいけれど、漸く承太郎くんの手が空いた今は、彼にくっついていたい。へらと笑ってベッドに上がれば、承太郎くんの腕が腰に回り、ぐいと引き寄せられる。抱き枕のような状態で、私は目の前にある承太郎くんの胸にぐりぐりと顔を押し付けたのだった。

16.11.04


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