one love: atonement 2 |
誰かの隣で眠るのは好きだ。 その誰かがシャンクスだと泣きたくなる。 彼の手のひらが肌を撫でる感触が好きだ。 彼の声が自分の名前を呼ぶのが好きだ。 彼の艶やかな髪が肌を滑る冷たさが好きだ。耳にかかる吐息が好きだ。こんな風に彼の体温を感じているのが好きだ。 生きているのが好きだ。 ただときどきそうしているのが難しい。だから雨にぬれた野良猫のようにうなだれて彼のところにやってくる。慰めてもらいにやってくる。情けない自分も、卑怯にもそれを隠したふりをして逃げ込む自分も、シャンクスは気付かない風でいつものように受け入れてくれる。 「……エース」 「早く、……」 「力抜け」 「いいから」 「だめだ」 エースは泣きそうに唸って彼の体を揺らした。 「なあ、シャンクス……」 「傷つけたくない」 シャンクスが低く呟いた。怒ったような声だった。エースは彼の肩にまわした腕に力を込め、鎖骨にキスをした。ぐずるように首を振って首元に額を押しつけると、中に入った指で大きくかき回された。 強引にほぐされていく感覚に下肢が震え出す。堪えようとしても子犬が鳴くような声が漏れてしまう。 シャンクスが耳元で何かなだめるようなことを低く繰り返し囁いていた。 膝の裏に温かい手のひらが触れて、知った風に大きく開かされてほっとする。汗をかいた背中に冷たいシーツが心地よかった。冷たい空気に触れた汗がいくつも転がり落ちた。 ひどく無防備な形にされて安心するのは不自然だった。でもコントロールを失ってすべてをシャンクスに委ねるのは、自分で自分を制御するよりも、この上なく安全なように思えた。 太腿の後ろに彼の硬い腰骨があたった。息を詰めている間にシャンクスが熱く押し入ってきて、瞼の裏が真っ白にはじけた。泣いたような悲鳴が聞こえた。 彼の唇が瞳の端に触れて涙を吸い、ようやくそれが自分の声だったことに気付いた。 next |