「昨日言わなかったけどぉ・・・折れてるよぉ。もうポッキリと」

朝早くに訪れたバン先生から語尾にハートが付くくらいにあっさり告げられた一言に愕然とした。

「ですよねー・・・」

朝起きても無くならない左腕の痛みと背中の痛み。
若干の嫌な予感は現実となり私に突き付けてきた。

「取り敢えずぅ。重症では無いからぁ動けるとは思うけどぉ。出来るだけ激しい運動はしないでねぇ?ちゃんと固定はしておくよぉ」

私の左腕と背中には痛々しい包帯が巻かれ腕は曲げれない様に固定されている。

「先生これ私今日外行けないですよね・・・?」

最終日でしたい事がまだ沢山ある。家に帰るまではなんとか無理しない程度に動きたいなぁと思って聞いたのはいいが、言った瞬間バン先生が大爆笑した。

「アハハ!!なまえそんなになってても外でたいの?!アハっ!ほんと、面白いね!!」

「······せ、先生、笑いすぎです…」

「ヤバいって····!!なまえはほんと昔から全然変わんないね。あー、笑い疲れたぁ…ごめんごめん!笑いすぎたねぇ」

「いや···あの、なんかすいません···」

笑い疲れたバン先生は近くの椅子に腰かけて私に向き合った。

「面白いからぁ特別にぃ家に帰れるまでちゃーんと動けるようにしといてあげるぅ」

「え!ほんとですか?!」

「ただしぃ」

ずぃ、とバン先生は真面目な顔で私に近付いてきた。
私は思わず仰け反って、は、はい。と声が漏れた。

「家に帰ったらぁしばらくはぁ激痛でぇ動けなくなるかもしれないよぉ」

「······げ、激痛………」

動けなくなる程の激痛というものは想像がつかないが…これも旅行を華々しく終わらせる為!家に帰ってしまえばまた退屈な毎日だし…それに家に帰っちゃえば怒る人も居ないから(レノとかお兄ちゃんとか)。いや待てよ…旅行帰りにボロボロで帰りしかも動けない程の怪我を負ってくる娘。

…………次のミッドガル行きがやばい…??
でも、ここで動けなかったら明日帰れなくなるんだよなぁ‥‥ホテル代なんてないし……
父ちゃん、母ちゃんに連絡も手紙になるから早くても3日はかかるだろうなぁ…
やっぱりここはバン先生にお願いするのがいいかな……………
ええい!!未来の事なんて分からないんだ!!何とかなる何とかなる!!

「お、お願いします!!」

「覚悟が決まったみたいだねぇ。じゃぁ腕だしてねぇ」

手際よく準備をするバン先生。いつも穏やかに喋る先生は治療になると人が変わった様に真剣な顔つきになるのだが、普通にカッコいい。昔から全然変わらないその風貌。
先生はミステリアスだ。歳も性別、私生活さえ知らない。もうかれこれ10年位の付き合いがあるのに…            

考えている間に処置を終えた先生は道具をしまい始めた。
刺された所を止血しながら先生に聞いてみた。

「先生ってミステリアスですよね?いつも何してるんですか?」

聞かれたバン先生はうーん、と考えながらガチャガチャと手を動かす。
しばらく考えて片付けを終え鞄をパン、と小気味良く閉めた。
そして振り返って満面の笑みで言った。

「秘密」

「えー……やっぱりですか」

「ご想像にお任せするよぉ」

「想像ですか…」

「うんうん。…さて、なまえ、体はどう?」

「え?えっと……」

……痛みが消えてる!!

「先生痛くないです!!凄い!めちゃくちゃ動けますよ?!」

感動で腰を回してみたり腕を回してみるが全然痛みが無い。
嬉しくてテンションがあがった。

「あー…なまえ?」

「はい??なんですか?」

「あのねぇ?それはぁやめた方がいいよぉ?」

「え?」

「治った訳じゃなくてぇ。一時的にぃ痛みを無くすだけだからぁ。あんまり調子乗って動かすとぉ、完治が遅れるよぉ」

「…………つまり折れている事には変わりないと言う事ですか…?」

固まって聞いた私に先生は笑顔で頷いた。
瞬間私は膝から崩れ落ちた。

「は、早く言ってくださいよぉぉぉぉ」

「アハハ!なまえがせっかちなんだよぉ」

「あんまり無理しない様にしなきゃ····」

「うんうん、その意気だよぉ!一応その包帯は付けておいた方が身のためだからねぇ」

「は、はい!わかりました!」

「じゃぁ僕はぁもう行くねぇ」

「あ!もう、行くんですか?」

「うん。忙しいからねぇ。次はぁゴンガガでねぇ〜気をつけて帰るんだよぉ」

「はい!先生も気をつけて!」

ありがとー、と言って先生は行ってしまった。
静かになった部屋でもう一度左腕を見てため息をつく。

利き腕じゃなくて良かったけど、どうしようかなぁ····
結構目立つよね···固定された棒だけ外して、長袖の服無いから左腕を隠せるグローブでも履いとけば大丈夫かな?

うん、いけそう。

良かったぁグローブ何種類か持ってきてて!
よし、と気合いを入れて朝御飯、逃しちゃったからどこかに食べに行こうかな、と思い、部屋の外に出ようとして気がつく。
扉のすぐそばに小さな封筒が落ちていた。

?何だろうこれ。
拾い上げて見ると表側は何も書いておらず裏側に小さくスラム教会宛。と書いてあった。

んー····これ、お届け物、だよね?バン先生の物かな?

部屋の扉を開けて廊下を見渡すがまぁ居る筈もなく。

宛先書いてるし····取り敢えず行ってみようかな?
早速準備を整えてホテルを出た。
















「本当にあったぁ……」

昨日一昨日に続きもう行きなれたスラム街。
顔見知りとなった面々に教会の場所を聞いて、途中お店でパンをいくつか買った。
地図を書いてもらいようやくたどり着いた。

スラム街から少し外れた所、周りには弱いながらもモンスターが居るその場所にぽつん、と一つそれは建っていた。
所々破損はしているが立派な造りの教会はとても美しかった。

それにしても……
モンスターは弱かったが、私の戦うスタイルだとどうしても背中も左腕も使ってしまう。
痛くないので尚更無意識に動く。
魔法はまともに使えないし、ここに来て新しいスタイルを考えないといけないかなぁ…

考えながら教会の扉を開く。

その瞬間。

ぶわっ。と暖かな風と色とりどりの花びらが通り抜け、花香が私の鼻をついた。
どこか懐かしいその香りに我を忘れてその光景に釘付けになった。

教会から射す光に照らされたその一角に咲く色とりどりの花。
その場所に後ろ姿の女性。楽しそうに花に水を上げている。光に反射されてきらきらと光る栗色の髪が靡いて美しかった。
ふとピンク色のリボンの髪飾りがきらり、と光った。
その瞬間、今まで味わったことの無い痛みが頭を駆け巡った。

その場に膝をついて頭を抑える。

『………て…』

「っ……?」

必死に痛みに耐えている頭の中から声が聞こえる……
知らない…女性の声……

「…誰…っ…」

『…集め………たす……の』

「……何……て?」

『私を………!』

「え?」

「もしもーし」

「!!」

上から降ってきた声に一瞬で頭痛が消える。
驚いて顔をあげれば先程花に水やりをしていた綺麗な女性。
近くで見ると綺麗よりは可愛らしいその風貌。
目が合ってニコリ、と笑ったその人に思わず心の声が口に出た。

「……天使?」

言って思わず口を塞ぐ。初対面の人になんて口説き文句を…!
言われた本人は少し驚いた顔をしたが、すぐに愛くるしい笑顔でクスクスと笑って首を振った。

「私、エアリス」

「…あ、わ、私はなまえ、です」

凄く片言になってしまって恥ずかしさで俯く。
すると視界の端に何かを捉え見てみればエアリスが手を伸ばしていた。
一瞬迷ってエアリスの手を借りて立ち上がった。

「ね、なまえ。大丈夫?」

「え?」

「ん?頭、痛そうにしてたでしょ?大丈夫?」

「あ、」

言われたが今はさっきの痛みが嘘の様にない。後、あの声…いったい何だったんだろう…

「うん、大丈夫。もう治ったみたい」

「そっか。よかった」

「うん、ありがとう」

「ううん、全然。ただもしもーしって言っただけ」

「でも、おかげで治ったよ」

「私ってすごいかも?」

「うん、すごいかも!」

二人で顔を合わせて笑った。
なんだか気さくでいい人そうだ。
美人でいい人って完ぺきじゃないか。

「なまえはなんでここに来たの?迷子?」

「あ、そうだ…あのね…」

鞄から今朝の封筒を取り出す。

「エアリスはバンって言う医者の事知ってる?」

「……えっとバン先生?うん、知ってるよ」

「ほんと?実はこれバン先生が落とした物だと思うんだけど、宛先がここだったから届けに来たんだ」

言ってエアリスに封筒を手渡すと何かに納得して封筒をいきなり開けた。

「えぇ!?あ、開けちゃったよ……」

「大丈夫大丈夫!多分だけど、これ、私宛だから」

「そ、そうなの…?」

にしてもいきなり開けるのもどうなんだ…焦ったよ…
エアリスはそのまま封筒の中を覗いてぱぁ、と花が咲いたように笑顔になった。

「なまえ。見て」

「え?……種?」

「うん!お花の種!前に先生が約束してくれたの。覚えてたんだ」

「前…」

先生って何回かミッドガルに来てたんだ。

「前って言ってももう3,4年も前!ふら、って来てふらっ、て、帰ったよ」

「そんなに前の事なんだ」

「うん、来てたなら顔、出してくれればいいのに…」

「……封筒持ってたって事は会いに来ようと思ってたんじゃない?待ってたら来るかも!」

「……うん、そうかも。じゃぁ待ってみようかな」

「……ね、私もここ居て良い?」

「え……?もっちろん!!大歓迎!来て来て!」

私の提案にエアリスは笑顔で腕を引っ張って連れていかれる。
ほんと可愛いなぁエアリス。
もう少し話したかったし、教会に咲いている花にも興味があった。
家の近くには無い色の花が咲いていたからだ。

エアリスは花が咲いている一角まで私を引っ張り、ねぇ!綺麗でしょ?と自慢げに言った。
私は大きく頷いてしゃがんでよく観察する。
自然に咲いた花と違って大切に育ててもらったとわかる位生き生きと咲いている。

「エアリスが育てたの?」

「うん、たまにだけどお水あげたりお話、するの」

「うん、すごく生き生きしていてお花も嬉しそうに咲いてるね」

「ほんと?!なまえお花に詳しいの?」

「少しだけど。家の近くに沢山咲いてる所があってたまに行くんだ。凄く綺麗だよ」

「ほんと?見てみたいなぁ…」

「見てほしいなぁ。きっとエアリス好きだよ!」

「…でもそれ、ミッドガルの外、だよね?」

エアリスの顔が曇った。…なんか嫌な思い出でもあるのかな…?

「うん…どうしたの?なんか嫌な事でもあったの?」

聞いてみたがエアリスはそれには首を横に振った。

「違うの……うーん、なんかね。空、怖くて…」

エアリスはそう言って変な事言ってごめん、と付け加えた。

「空が怖いって…?」

「……うん、吸い込まれそうで、怖いの」

そう言って俯いたエアリスに私はなんだか親近感を覚えた。
だって、私も同じような感覚を知っている。

「変じゃないよ?だって私もその感覚知ってるもん」

「……え?····なまえもそうなの?」

「うん、私は空を見てそうならないけど、マテリアをじっと見てるとそうなる」

「マテリアで?」

「うん、だから別に変じゃないと思うよ?……私だけかもしんないけど…」

そう言って苦笑いをするとエアリスはきょとん、とした後、クスクスと笑った。

「私たち変わり者同士かもね」

「はは、ほんと!そうかもね!」

また二人で笑った。

「外出るのが怖いならここをお花畑にすればいいんだよ」

「ここを?」

「そ!私が今度家の近くのお花の種とか沢山持ってくるからさ!お花で一杯にしよ!」

「………」

「?エアリス?」

「お花いっぱい、財布もいっぱい」

「え?」

「ううん、なんでもない!なまえありがとう!」

「…そういえばさ」

エアリスが大事に今も持っている封筒。
先生からのお花の種。なんの種類の種なんだろう。
エアリスに許可を貰って見てみるが見たことの無い花の種だ。

「何が咲くか楽しみだね」

「うん。‥‥これは家の方で育てようと思う」

「家の方?」

「うん!あ、そうだなまえ。良かったらお昼ご飯家でどう?」

「えぇ?!」

「お母さんのご飯美味しいんだよ!ね!なんかお昼の話したらお腹すいちゃった!ほら!行こ行こ!」

「ちょ!エアリス!?」

またしても引っ張られて教会を出た。
エアリスは少し強引な所があると思う……別にいいけど…
いきなりあがって迷惑じゃないだろうか……
エアリスに言ったら大丈夫大丈夫。と軽く躱された。

と言うかバン先生は…?

「3、4年も顔出さなかったんだから、今日も出さないよきっと」

「えぇ………」

エアリスに丸込められた感が否めないが、私は連れられてエアリスのお家にお邪魔した。
お母さんのエルミナさん。……めちゃくちゃご飯が旨かった。
しかも凄く優しくて、この親合ってこの娘って感じ。

「そっか…なまえ、明日帰っちゃうんだ…」

しゅん、としたエアリスが可愛すぎる。帰るの止めたい位には可愛い。

「うん…せっかく仲良くしてくれたのに残念だなぁ」

「…もっとお話ししたいなぁ」

「じゃぁ連絡先交換する?」

「うん!する!」

やった!また一人私の携帯に連絡先が増えて嬉しくなる。

「ねぇなまえ。良かったらこの後話したいから、スラム街回らない?」

いいアイディアが浮かんだと手を叩いて笑顔で言ったエアリス。
私がいいよ、と肯定しようと思った時、台所で作業をしていたエルミナさんがエアリス、と制した。

「最後のミッドガルなのよ?なまえちゃんだって行きたい所あるんじゃないの?」

「あ…そっか。そうだよね」

「え?いや、大丈夫だよ!むしろ私もエアリスとお話ししたいな!」

「ほんと?」

「うん!」

笑顔で頷くとエアリスも満面の笑みで喜んでくれた。

「ほんとにいいのかい?無理してないかい?」

別の意味では無理してますが…エアリスに関しては全然でむしろもっと一緒に居たい。
シスネもそうだけど女友達は貴重だ。
最早お金を貯める事は出来ないからあのピアスは諦めた。
上に行ったらまた欲しくなりそうなのでここで大人しくしておこう。

エルミナさんにご飯のお礼とエアリスを借りますね!っと言って二人でスラム街へ繰り出した。




「なまえはなんでミッドガルに来たの?」

「うんとね、お兄ちゃんがこっちに居るんだ。んで、お兄ちゃんに会いに来たの」

「ふーん、お兄ちゃんかぁ」

「エアリスは兄弟とか居ないの?」

「うん。私ひとりっ子。なんだかちょっとうらやましいかも」

「そう?…確かに兄弟が居ると心強いかも」

「心強い?」

「うん、私結構自分の限界とか考えずに思ったら行動しちゃうタイプでさ、何回もお兄ちゃんに助けてもらったんだよね」

最近はレノやルードさんにもお世話になってます。

「私は…結構あれこれ考えちゃうかも」

「そうなの?」

「うん。…やっぱり平和が一番だから…冒険は全然しないな…」

「エアリスはずっとここに住んでるの?」

「うん」

「そっか……。別にエアリスがそれでいいって言うならいいと思うけど……。」

世界は広い。私はずっと村に籠っていた分、沢山いろんな経験がしたい、色んな場所に行って見たいと思う。
スラムは良い所だと思う。皆生き生きと毎日必死に生きている。仲良くなれば皆いい人だし。でも、なんだかもったいないと思う。

「世界は広いよ?エアリス。ね、見ずに後悔するなら見て後悔したくない?」

「え…」

「私も付いてるからさ!一緒に行こうよ!大丈夫。一緒なら怖くないよ。私の故郷紹介したいなぁ、あ、後お花畑!」

後、家の近くにあるパン屋のアップルパイが美味しいし、エアリスとお買い物もしたいな!
あれこれブツブツ言う私。すると不意にエアリスが笑いだして、驚いた。

「ご、ごめん。完全に自分の世界入ってた」

「ううん、いいの。なまえありがとう」

笑いながらお礼をいったエアリスはでも。と続けた。

「もう先客が居るんだ」

「えぇ!?」

おどろいた私を見てまた笑った。

「なんだか…そっくり」

「え?」

「先客さん」

「私と?」

「うん。同じ様な事言ってくれた。…すごく嬉しかった」

「そ、そっか···えっと…先客さんは…男の人?」

「うん。とっても優しくて、強い人なんだ」

「…え、彼氏さん?」

「うーん、違うと思う」

「思う!?」

「うん、だって初めて会ったの、4日前」

「えぇ!?しょ…初対面で言われたの…??」

「うん。そうだけど……」

絶対ひとめぼれじゃん。····いや分かるよ?エアリスめっちゃ美人だし口説きたい気持ち凄いわかる····でも···

「それ、ほんとにいい人?」

やっぱ初対面って言うのが気になる。

「うん、いい人だよ。なまえだって初対面だけどいい人だと思うよ、私」

「ほんとだ···私、人の事言えんかった····」

がくぅ、と肩を落とす私にエアリスはまた一つ笑った。

「後ね、ワゴン作ってくれるの」

「ワゴン?····なんの?」

「お花を売るの」

「花売りワゴンか!」

うわぁー懐かしい。昔、お兄ちゃんと花売りごっこしたなぁ〜

「でも、また何で花売りワゴン?」

「うん、なんかね。ミッドガルってお花珍しいから。売ってミッドガル中お花だらけにするの。お花売れたらお財布も一杯でしょ?
名付けてミッドガルお花いっぱい、お財布もいっぱい計画だよ」

な、なんて····

「一石二鳥!ミッドガルってそうなんだぁ。確かに緑見てないかも。ミッドガル中お花だらけいいかも!」

「ほんと?」

「うんうん!私もお手伝いしたいけど···邪魔しちゃ悪いし先客さんと頑張ってねエアリス」

「うん、ありがとう。····楽しみだな」

小さく呟いたエアリスの横顔は彼の事を想っているのか少し頬が赤く染まっていた。
あれ····もしかして····

「·····エアリスは、もしかしてその人の事、好きなの?」

恐る恐る聞いていると少し驚きながら目を見開いたエアリスはうーん、と少し考える。

「好きかも」

「おぉ」

こ、こんな可愛い人に好きになって貰えるなんて····良かったな!先客の君!

「わー、こんな美人に好きって言われるなんて羨ましい!エアリス、お幸せになるんだよ…」

「何それなまえ、おばさん臭いよっ」

「おばっ!!し、失礼な!まだぴちぴちだよ!」

「なまえには居ないの?好きな人!」

「えぇ!?全くいきなりだね?!」

「ね、ね。居ないの〜?」

ぐいぐい近づいて来るエアリス。凄く楽しそうだ。
ここで正直に言ったらもう根掘り葉掘り聞かれそう……
でも流れとは言えエアリスの恋愛話も聞いたし、何より嘘つけない…

「う…うん……い、居るよ…」

そう言った瞬間きらきらとした目で腕をガシッと掴まれた。

「え、エアリス?」

「ね、ね、どんな人?気になるなぁ〜」

「…ど、どんな人……」

頭にレノの事を思い出す。どんな人?
うーん……

「たまに意地悪だけど…優しくて…面白くて…強い、かな。何回も助けてもらったし」

「ふーーん、なまえの好きな人見てみたいぃ〜」

「え?私だってエアリスの好きな人見てみたいよぉー」

「あ」

「え」

エアリスと二人で和気藹々と話をしていた所、ふと視線を感じてそちらを見ると
見覚えのある顔。目が合った瞬間うげ、と顔を歪められた。

「な、なんでそんな顔するんですか?おじさん……」

「なんでもくそもあるかよぉ。昨日俺の事放置しやがって…ちょっと寂しかったぞ…」

「ほ、放置?!」

そ、そういえば昨日お兄ちゃんが開けたドアに激突して…ソファーに寝かしたままだった…

「ご、ごめんなさい」

「もういいよ…というかまた懲りずに来たの!?今日は絶対依頼しないからね?!彼氏居ないみたいだし!!」

「いや、彼氏じゃないって」

「もう、ほんとあの人怖すぎ!!何あの鋭い眼光!おじさんちびりそうだったよ?!」

「パウロさん落ち着いて?」

「落ち着けって……あれ?エアリスちゃんじゃん。どうしたの?」

わーわー言い始めたおじさんは私が喋っても全然反応してくれなくて…エアリスの方を向くと苦笑いをしていつもこーだよ。と言った。あ、やっぱり知り合いなんだ。
エアリスがおじさんの顔を覗き込み話しかけるとおじさんは話すのをやめてエアリスを見て目をぱちくりした。

てか、おじさんの名前パウロさんって言うんだ。知らんかった…なんかごめんなさい。

「なまえとスラム街お散歩してるの」

「お散歩て…お前たちそんな仲良かったか?」

「さっき友達なったの」

「さっき?!」

「う、うん」

「コミュ力凄すぎだろ……てかなまえちゃん怪我大丈夫なのか??」

まぁ疑問は最もだよね····
隣に居るエアリスが不思議そうにこちらを見ている。

「だ、大丈夫大丈夫!ほら見て?怪我なんてすぐ治ったよ〜」

元気アピールをするとパウロさんは渋い顔をして私を見る。
あれ、信用されてない?!

「ったく、ほんと人騒がせな奴だな」

「あ、アハハ····」

なんとか大丈夫そうでほっと一息ついた。

「なまえ怪我なんてしたの?」

と思ったらエアリスから難しい顔をして聞かれた。
そ、そんな眉間に皺寄せたら可愛い顔台無しだよ?!

「え?いや、全然···」

「聞いてくれよエアリスちゃん、あのな?」

待って〜待って〜おじさんが全部話すぅ〜
やめてくれぇ〜せめて私に話させてぇ〜

私の願い虚しく一通り私の事を話したパウロさんは満足そうに笑った。
エアリスはエアリスで興味津々に話を聞いてるし、なんかの物語聞いてるみたいに聞かないでぇ

「なんでおじさんが喋るんだよぉ···」

「え?あー···確かに?すまんすまん」

「でもなんでまた何でも屋なんてしてるの?」

「····欲しいものあって····」

「欲しいもの?」

「うん···お店で売ってたピアスなんだけど5000ギルするんだよねー」

「5000?!」

「高いね。なんでまた?」

「なんか、気に入っちゃってさー、自分用に欲しいものだから頑張って稼ごうと思ったんだけど全然足りなくてさ」

「ったり前だろー、スラムで5000なんて稼げれはするが···1.2日じゃさすがになぁ···」

「うん、でも分かってた事だし、楽しかったから全然良いの!」

「···なまえちゃんが言うなら···別に良いけど···」

「···ねぇなまえ」

「ん?どうしたのエアリス?」

「うん、スラムにもね色んな物売ってる所あるんだけど、見に行かない?」

「あー、あそこなら色んな物売ってるからミッドガルのお土産に見とけばいいと思うぞ」

「ほら、じゃあ行こう?」

「え、わっ!」

エアリスにまた腕を引かれる。なんか今日こんなんばっかな気がする····
パウロさんに手を振ってお別れしたが、なんだかほっとした様に凄く笑顔で手を振り返していた。
私、疫病神みたいな扱いなん?ひどっ










エアリスに連れられて来た露店には彼女が言った通り沢山の物が沢山並べられていて正に宝庫と言える。
エアリスと二人でテンションMAXで見て回った。

スラムで自分で稼いだお金の範囲で買えるものばかりだったから思い切り使おうといくつか選んで買った。


「ね、エアリス!これ、可愛くない?」

「うん、すごく可愛い!」

「これ、色違いもあるからお揃いで買わない?!」

「え?ごめん。私お金、持ってないから···」

「じゃぁ出会いを記念して!はい、どーぞ!」

そもそもあげる気満々だった私は店主にお金を渡してエアリスに渡す。
エアリスは驚いた後、笑った。

「ん?どうしたの?」

「ううん、なんでもない。ありがとうなまえ。大切にする」

そう言って二人でお揃いの色違いのブレスレットを付けて見せ合った。
腕をあげて身に付けた所を確認する。やっぱり可愛い。
私のは空色の、エアリスはピンクの物。

満足した私達はその後も他愛の無い話をしながらスラム街を回った。

そんなこんなでもう夕方になってしまった。
そろそろミランダさんとの約束の時間だ。
エアリスとお別れするのは寂しいけど携帯があるからいつでも連絡出来るよね!

「エアリス、今日は本当にありがとう」

「ううん。私の方も、ありがとう。すごく楽しかったよ」

「ほんと楽しかったね!また、一緒に遊ぼうね!」

「うん。また連絡するから」

「うん!私も連絡する!」

じゃぁね。
二人で合わさった言葉に笑ってどちらともなく背を向けて別れた。

なんだかほんと名残惜しいな。
と言うか今日はなんて、ほのぼのとしたいい1日だったんだろう!
これからご飯を食べて寝て、明日に備えよう!
さ、お店に行ってお兄ちゃんを待とう。

私は鼻歌を歌いながらお店に向かって歩いた。







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