最近ミッドガルの周辺にモンスターが大量発生しているそうだ。
噂によると科学部門で使っていた被験体が消えているらしい。
もしそうだったら、確実に神羅が悪いよなぁ。
その尻拭いを俺等がやってるって訳だよな。


前の方で同期達がひそひそと話しているのが聞こえてくる。
もし、それが本当ならばちゃんと倒してしまわないと。
人々が安全に暮らせるように。

今回の任務は大量発生しているモンスターがスラムにも入ってきているとあって、その討伐を任せられた。
こういうものはソルジャーなどが行っていて神羅兵は街での警備とかが多いのだが、最近はソルジャーの人数が足りず度々こういった仕事も多い。

俺はこういった仕事をこなしていって良い評価を貰う。そしたらきっとソルジャーになれる。
そう。信じてここまで来た。
本当になれるのだろうか?···ソルジャーってどうやってなるんだ?

「クラウド」

「!はい!」

どうやら着いたらしく、隊長が指示を出している。
俺の配置は六番街近辺。
同期がニ人一緒だが見た所あまり普段と変わった所は無かった。
同期ニ人は今回の任務に乗り気ではない。
こういった仕事はソルジャーの物だと思っているからだ。
行っている以上きちんとこなして欲しいものだが、大きく言えない自分に嫌気が差した。

雑談をしながらも徘徊を続け、何匹か弱いモンスターも倒した。今回も大きな成果はあげれそうにないな。と落ち込んだ時だった。

同期の一人が叫んで、バッと振り向くと明らかにここ等にいるようなモンスターではない。あれは····
べ···ベヒーモス!?

「クラウド!これはやばいぞ!?」

「と、取り敢えず攻撃を····ぐあっ!!」

「おい!大丈夫か!?」

銃を撃ち込むが決定打にかける攻撃。怯むことの無いベヒーモスは同期の一人を突き飛ばした。
その勢いのままこちらに向かってくる。
為す統べなく体当たりをされて吹き飛んだ俺の体はそのまま地下水路の穴へと落ちていった。

遠くで俺の名を呼ぶ声が聞こえる。
激痛に顔をしかめながら見ればベヒーモスが俺を追いかけて来たのだ。
くそ、全身の痛みに耐えながら銃を撃ち込む。
丁度弾は目を貫通してベヒーモスが怯んだ。

攻撃に集中した俺は受身をする事が出来ずそのまま水路に落ちる。下水に落ちた俺はそのまま痛みであまり体が動かせずに流されていく。
どんどん意識が遠のいていった。












「·····!」

誰···?

「····ぶ?···て!」

俺を呼んでる?
俺は····?

「ねぇ!大丈夫!?起きて!!」

「!」

鮮明に聞こえた声に一気に覚醒し目を開けた。


「あ!よかったぁ〜!!目が覚めたんだね!」

「·····き、君は···?」

「ん?あ、私なまえ!ここは下水道だよ?点検してたら人が流れてるからビックリして心臓止まりそうだったよ〜」

「···下水道····!ベヒーモスは?!」

ガバッと起き上がって激痛に腹を抱えた。
なまえと名乗った女性は慌てて俺を支えた。

「ちょ、ちょ!大丈夫?!どっか怪我してるの?!と、取り敢えずケアルするね?」

彼女はそう言って俺が痛みで抑えているお腹辺りにケアルをかけた。大分楽になった。

「ご、ごめん。助かったよ···」

流されているのを見つけて下水に飛び込んで助けてくれたそうだ。よく、ここまで引き上げられたね。って言ったら慣れてるからって····よく、あるのかこんな状況?
でも、まさか女の人に助けられるなんて····

「いいの、いいの。こーゆーのは助け合い、でしょ?」

彼女はそう言って人懐こい笑みを俺に向けた。
頬が熱くなるのを感じて首を振った。

「ありがとう」

お礼を述べて立ち上がる。手を貸してくれようとしたがそこは手で大丈夫、と制して一人で立ち上がる。
彼女は特に気にすること無く合わせるように立ち上がり、俺に向き合った。

「うん。···でさ、ベヒーモスって?」

「!そ、そうだ!俺。さっきまでベヒーモスと戦ってたんだ!」

「ベヒーモスって···あの、獣の??」

「あぁ。俺を追ってここに落ちてきてる筈なんだ」

今回は無事に助かったけど、今ここで襲われたらどうしよう。
幸い銃は肌身離さず持っていたから有るけど、彼女を守りながら一人で戦えるか···

「···てか、君なんでここに?」

普通の女の人がこんなモンスターも居る地下水路に居るなんておかしい。
問われた本人はきょとん、とした顔で俺を見ていて、何かを思い出したかのようにあー!と声をあげた。

「忘れてた!私ポンプの修理に来たの」

「ポンプって下水道の?」

「うん、そーだよ」

「修理屋なの?」

「ううん。何でも屋!」

「何でも屋?」

「うん!依頼があればなんでもする何でも屋!スラムの人達に頼まれてここに来たの」

「一人で?」

「うん!腕には自信あるからさっ」

彼女は自信ありげにふふん、と胸を張った。
そんな彼女に俺は苦笑で返すことしか出来なかった。

「それにしてもベヒーモスに追われてるってどんな状況?こんなスラムの中にいるようなモンスターじゃないよね?」

「え?あぁ···そうだね。」

「···あ、なんか企業秘密系の仕事?」

「え?····いや。多分違うと思うけど···」

神羅から脱走しモンスターだとすればそれは秘密にしないといけなさそうな案件だけど。そこを、省けば伝えても大丈夫だろう。

「最近、ミッドガルの周辺でモンスターが大量発生してるんだ。それがスラムに入ってきてるって事で俺達が討伐に来たんだけど」

「へぇ!!それはありがたい!神羅のお兄さん達頑張ってるんだね!お疲れ様!」

「え?あ、ありがとう···」

満面の笑みで俺に感謝してくれた彼女の言葉に嬉しくなって心が温かくなり、自然に頬が緩んだ。

そこで、あっと気付いた。
被っていたヘルメットを外した。

「あ、俺の名前。クラウドって言うんだ」

「おー···うん、クラウドだね!よろしくクラウド!」

なまえが自然に手を差し出してきたので、一瞬躊躇った後握り返し握手をした。
なまえが俺の顔をさっきからずっと見てるがどうかしたのかな?

「えっと···俺の顔に何かついてる?」

「え?!いやいやごめん。そうじゃないんだ!神羅兵の人って皆それ被ってるから同じに見えたけど···びっくりした。クラウドって格好いいね!」

「え」

「···え?いや、あの···なんかごめん?今言う事じゃない?」

いきなり面と向かって言ってくるもんだからドキッとした。
苦笑いをして謝るなまえに平静を装いつつ、大丈夫、と告げる。
全然会話になってない気がするが、気にしていられなかった。
そんな俺になまえはふふ、と笑った。

「ね、これも何かの縁だしお手伝いするよ?」

「な!そ、それは駄目だ」

「えー。なんで?」

「ベヒーモスだよ?軽い気持ちで相手する程甘くないんだぞ?」

さっき対峙したから分かる。強くて凶暴。一人ではきっと倒せないだろう。
なまえに少し強めに言ってしまったが、彼女を巻き込むわけにはいかない。これで諦めて欲しいと思いながら彼女を見たが、なまえは真っ直ぐに俺の目を見ていた。瞳と瞳が合って息を飲んだ。


「うん、でも私クラウドを放っておけないんだけど」


「え」

真剣な声で言われた言葉。さっきからなまえの言葉に心が動かされる。

「一人より二人の方がいいよ、絶対。クラウド一人でここに来た訳じゃないんでしょ?」

「あ、あぁ。仲間が多分上にいるか、···探してくれているかな····」

あの時、一人無事な奴が居たから応援を呼んでくれてると思うけど。どうだろうか····

「ね、そこまでで良いから私も一緒にいくよ?お願い」

単純に嬉しい。少しの意地がでかかったが彼女の真っ直ぐな瞳にもう折れるしか無かった。

「分かったよ···。ちゃんと守るから」

「わ、ありがとクラウド!じゃぁ一緒にがんばろーね!」

無邪気に笑ってこっちだよ!と案内をしてくれるなまえ。
···ちゃんと、守ってあげなきゃ。心に強く思い。後に続いた。

「そういえばなまえ。」

「ん?なーに?」

「ポンプの修理はいいのか?」

「げ」

下水道でスキップと言う似合わない状況で歩いてるなまえに思ってみた事を言ったら、絶対忘れてたな。

「····ポンプって何処にあるんだ?」

「え?と···ちょっと待ってね」

彼女は付けていたポシェットの中から紙を出してえー、とと呟きながら見ている。手書きのそれはここの地図だろう。
しばらくあーだこーだ言ってこっちかな?と自信なさげに言った時だった。

「!なまえ!しゃがんで!敵だ!」

いきなりなまえの後ろに現れたモンスターに銃を構える。
なまえはそんな俺の言葉に即座に反応ししゃがんだ。
その瞬間に銃を撃ち込む。
倒した、と思ったら後ろからもう一体が現れて一瞬反応が遅れた。
しまった、と思った時、勢い良く俺の横をなまえが駆けていく。
モンスターに向かい素早い蹴りを繰り出し、そのままモンスターは壁に激突し消滅した。

「ふぅ。ありがとクラウド!素早い反応だったね!」

「あ。う、うん。なまえも···す、凄いね···」

素直にそう思った。まさかこんな華奢な子からあんな一撃が繰り出されるとは思わなくて驚いた。
呆然としてるであろう俺の事など気にせずになまえは笑った。

「ありがとう!さ、どんどん行こうクラウド!」

「う、うん」

「あ、ねぇ。寄り道していい?」

「合流してからじゃ駄目か?」

「うーん。確かにその方が安全だよね·····でも、もうすぐそこだからやっちゃいたいってゆーのもあるんだよなぁ···」

「·····はぁ、すぐ終わらせよう」

「!ありがとう!助かる〜」

なまえはこっちだよ、と俺に言って走っていく、俺もそれに慌てて付いていく。
何もなければいいが····

その後は、何回か戦闘をしたものの目立って怪我もなく順調に進んだ。


「あ、ここ、ここ」

「開けた所にきたね」

「うん、えーと···あったあった」


近付いていくととても古い型の様でボロボロなのが見てすぐ分かる。

「これは中々古い型だねぇ。まさか都会のミッドガルでこれを見るとは思わなかったよー」

「直せそう?」

「うん、任せてー」

早速ポシェットから工具を取り出して作業に取りかかる。
俺はなまえの作業の間辺りを確認する。
今の所は大丈夫そうだな。いつ何があるか分からないので注意をしながらなまえに話しかける。

「なんでまた何でも屋なんてしてるの?」

なまえは、手を動かしながら答える。

「ん?欲しいものがあって」

「欲しいもの?」

「そ、その為にお金貯めてるんだよね〜。クラウドは?」

「え?俺?」

「うん。なんで神羅兵になったの?」

「·····あー···」

神羅兵になりたくてなった訳ではないけど……

「?クラウド?」

「うん···俺·····いや、」

どう返答しようか迷っていた俺に少しこちらの方に顔を向けて苦い顔をしている。

「げ、もしかしてそれも何か企業秘密系?!」

どんな企業秘密だよ。

「は?いや、違うけど·····」

「そう?言いたくないならいいけど」

あっさりと言ったなまえは黙々と修理を再開した。
あっさり引いてくれた事に安心した。あまり情けない自分の心の内を知られたくなかった。
しばらく沈黙が続いたが、それを破ったのはなまえだった。

····神羅ってさ、大変、だよね。
呟くように言ったその言葉は静かな下水道の中ではよく聞こえた。

「え?」

「····なんかね?さっき、スラムの人たちがさ、神羅は裏で色々やってるって悪い噂聞いたんだけど。
………私、綺麗な会社なんてないと思うんだよね。大きな会社で、働いてる人だって沢山いて、皆が皆いい人ってわけないでしょ?だからさ、神羅の全部が悪い訳じゃないのにねって思うんだよ」

「····なまえ?」

なまえが何を言いたいのか分からない。と言うかそれを神羅で働いている俺に話すのもどうなんだ、と思う。

「ね、クラウドはさ、ソルジャーって。どう思う?」

「え?ソルジャー?」

「うん。」

「····お、俺は、格好いいと、思うよ」

「うん。格好いいよね。強くてさ憧れる」

「うん、わかる」

「でも、私には無理」

「え?無理って?」

「怖いの。なんだか。」

「ソルジャーが?」

「ううん、魔晄が」

「魔晄····」

「マテリアってさ魔晄エネルギーが凝縮されて出来てるでしょ?凄い綺麗でさ、集めるの趣味にしてるんだけど····なんかね?見れば見る程、それに吸い込まれて消えて無くなりそうな感覚になるんだ。····だから、ソルジャーって魔晄を浴びてなるんでしょ?魔晄中毒にもなりたくないし、無理だなーって」

「別に、なまえがソルジャーになる必要ないんじゃない?」

「まぁ、そうなんだけどね。···なんか、リスクを背負ってまで人の為に強くなりたいって凄い事だなって。」

「····確かに、そうかもしれないけど······案外もっと単純かもしれないよ?」

「単純?」

話しながらも手を動かしていたなまえが手を止めて俺の方を見る。
目が合ってうなずく。

「うん、······英雄になりたいとか。きっとそう言う夢見がちな理由かも」

「夢があるのはいい事じゃない?」

「え?」

真剣だったなまえの顔は綻んでいて、楽しそうに作業の手を動かし始めた。

「目指すものがあって、それに向かって努力する人、格好いいと思う」

格好いい…。か…

「····でも、それはきっと特別な人がなれるんだろうなって···」

「そんなことないんじゃない?確かに世界中の人が英雄だ英雄だって讃えてくれるようになれるなんて難しいと思うけど。
一人でも、思ってくれたらもうそれって英雄だと思わない?」

「一人でも··?」

「うん、目の前の人を一人一人。救える命、助けられる命。自分に出来る事を人の為に。そうすればきっと全員じゃなくてもきっとクラウドの事、英雄って言ってくれる人、出来ると思う。その為のその制服でしょ、ね」

それは、確実に俺に向けられた言葉で

「え····え?!」

俺が英雄にソルジャーに憧れて神羅に入ったなんてお見通しかのようで、少し居心地が悪くなる。

「アハハ、クラウド、もしかしてソルジャー目指してる?」

今思ったことを聞かれて心臓がはねた。心が読めるのか?!

「な!なんで?!」

驚いた声を出すとなまえは困ったように笑った。

「あー、なんか誘導尋問みたい!ごめんね?
でも言わせて!クラウド、きっとなれるよ!…だって伝わってくるもん。気持ちが。さっきから、私の事守ってくれるように戦ってくれたよね。」

「そ、それは···俺の仕事でもあるし···」

「うんうん。仕事でも嬉しいよ!···優しくて強い!自信もって!私のお墨付き!」

笑いかけられて頬が熱くなった。恥ずかしくてそっぽを向く。

「···なまえのお墨付き貰ったってなぁ···」

「うわ、ネガティブ!ほら、前向き前向き!!」

元気に言ったなまえを見て頭で考えるよりも先に口から言葉が出た。

「·····なまえが羨ましいよ」

ほんとにポロリ、と出た言葉にハッ、とした。
そんな俺をキョトンとした顔で見たなまえは苦笑いをした。

「ふーん。クラウドは私が羨ましい、と」

「え?う、うん。俺はそんなに前向きになれないよ…」

一回ネガティブになった俺の心はどんどんと曇っていく。なまえはそんな俺を何度も励ましてくれてるのに。
呆れたかな。チラリ、となまえを見たら何かを考えて頭を捻っていた。

「……ふーーーん。わかったクラウド一回さ、この仕事終わって暇な時遊ばない?てか、そんな暇ある?」

いきなりの提案に驚いた。遊ぶ?俺と?

「え····え?俺と?」

「そ、クラウドと」

「た、多分あると思うけど····」

何でこんな俺と遊びたいんだ?

「うん、よしじゃぁ、その時ゆっくり話し合おうじゃないか!携帯の番号教えてよ」

話し合うって····なまえに俺と何を話し合うっていうんだろう。でも、そうやって俺の事を気にしてくれてるのは少なからず嬉しかった。
なんだか、なまえと居ると素の自分を出しても大丈夫だ、と言う不思議な感覚になる。

携帯を握りしめて手を差し出してきたなまえに、俺もポケットから携帯を出し渡す。

「い、いいけど····はい」

「えーと。こーして、よし、はい、ありがと!よっし、修理も終わったし番号も交換したし、とっととこんな臭い所おさらばしよっか!」

登録をした携帯を返して貰い俺に微笑見かけてきたなまえに自然に頬が緩んだ。

「うん、早く帰ろう。ほんとに危ないからね」

「はーい!周囲を確認してーー、よし、いくぞーー」

注意した俺に、おー。となまえが元気良く言った次の瞬間だった。
ヒュー、と何か落ちてくる音が聞こえたと思った時、なまえの後ろにベヒーモスが勢い良く落ちてきた。
きちんと着地をしたベヒーモスは雄叫びをあげなまえに向かってその大きな手を振り上げた。

「なまえ!!!」

叫んだ時にはもう間に合わずになまえは手でガードはしていたが、もろにパンチを食らった。
勢い凄まじくなまえは吹き飛ばされ、壁に激突する。

「なまえ!!!」

「だ····だい··じょーぶ!クラウド·····私に構わず··逃げて···!」

何を馬鹿な事を言ってるんだ!!俺は怒りで叫び、ベヒーモスに銃弾を浴びせる。
先程のダメージが響いてるのか少しの攻撃でも怯み、運がいい事に倒れこんだ。
それを見て急いでなまえの元へと走る。
意識はあるが、息がヒューヒューと苦しそうにしている。口元から血が流れ出している。
すぐになまえを抱き上げ走る。
やっぱり修理なんて後に回せば良かった。
今更後悔なんてしても意味がないが、守れなかった事に心臓がキリキリと痛み苦しい。呼吸も荒くなって脇腹が痛む。口から血の味がする。
早く、早く安全な場所に!

あそこに扉がある。あの中に取り敢えず入ろう。

勢い良く扉を開け中を確認する。休憩室のような場所で休む為のベンチなどもあり、すぐになまえを横にする。

「なまえ!ポーション飲めるか?」

なまえは声を発するのが苦しいのか頷いて少し起き上がろうとする。
それを慌てて支えながらポーションを飲ませる。

「···はっ。あ、ありがとう····クラウド。大分楽になったよ」

「ごめん。なまえ。俺、やっぱり」

「え?え?!ちょ!待って待って。な、泣かないでよ!私死ぬ訳じゃないから」

え、泣いて····!!
確かに濡れた目を勢い良く擦る。

「大丈夫!大丈夫だよ?ほんとクラウドが居てくれて助かったよ。一人だったらまじ死んでた」

「俺、何にもしてない」

「何いってんの!ベヒーモスひよらせてたじゃん!私の事もここまで運んでくれて。ありがとう」

なまえはゆっくり俺の手を両手で包み込むように握った。
熱くなっていた俺の手に彼女の手は冷たくて冷やされていく。

「でも····」

「ね、クラウド。私のポシェットの中身出してくれない?」

握ったまま俯いた俺の目を覗いて真っ直ぐ見つめてくる。
ね、お願い。と困ったように微笑んだなまえに少しずつズキズキと痛む心臓が収まってくる。
俺は頷くとなまえのポシェットを腰から外して中の物を出していく。

携帯、マテリア、消費アイテムがいくつかとその他に工具など色々入ってて。どうやってしまってるんだこんなに···と驚いた。

「携帯は····電波ないよね···。ふー。仕方ない。やるしかないか····」

なまえは俺に掴まりながら
ざっとポシェットの中身を見ている。そーだ。と何か思い付いた様に手を伸ばす。

「クラウド···一か八か。やってみない?」

ニヤリ、と笑ってなまえはかみなりのマテリアを握った。



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