「神宮寺、って……あの神宮寺レン!?」
「え、友千香知ってるの?」
その名前を聞いてトモちゃんはピンときたようだけど、音也くんたちはよく分からないといった顔をしていた。
「あんたら知らないの?神宮寺レンといえば、あの神宮寺財閥の御曹司じゃない!」
「ええっ、そんなにすごい方がこの学園に……?」
ハルちゃんが混乱している。
音也くんと那月くんは、神宮寺財閥の名前だけ知っていたようで、へええと感心していた。
「で、マサやんはあの聖川財閥の御曹司。二つの財閥は何かと対立してるから、マサやんと神宮寺レンは仲悪いんでしょ?」
ハルちゃんは真斗を見てええええと声をあげているが、他の二人は納得した表情をしていた。
「少し間違いがあるな」
今まで黙っていた真斗が静かに口を開く。
「お前達、名字財閥を知っているか?」
「ええ、有名ですしねぇ」
「俺でも知ってるよ?」
「名前はその名字財閥の跡取りだ」
ええええ!と声があがるが、真斗はそのまま続ける。
「聖川財閥と神宮寺財閥の対立が最も酷かった時期に、両者の間に入って仲を取り持ったのが名字財閥だ」
淡々と話す真斗を、私は静かに見つめる。
「俺と名前と神宮寺は幼馴染でな、仲も良かった」
真斗はそっと目を伏せる。
昔のことを思い出しているのだろうか。
「現在、聖川財閥と神宮寺財閥の仲は良好だ。しかし、奴とは……」
「真斗、」
「名前が居なかったら、俺達は再び互いに向き合おうとはしなかっただろう」
真斗が顔を上げ、そこでやっと目が合った。
「名前は昔のように三人でいることを望んでいて、俺達は名前の望みを叶えたい。……この部屋割りにも、意味があるのかもしれないな」
ため息を吐いて、微笑を浮かべる。
……真斗とレンも少しずつ頑張ろうとしてくれてる。
私も頑張らなきゃ。
「そういえば名前、お前の相部屋の者は誰なんだ?」
「萩原雅、さんだって。仲良くなれるように頑張ってみるよ!」
「……そうか、頑張れ」
こうして、私達はそれぞれの部屋へ向かった。