「たっかしゅぎさーん!」
「……オイ、何があった」
「晋助用に買った酒を飲んだらこうなったでござる」
船に戻った俺を迎えたのは、真っ赤な顔で妙に上機嫌な名前と、多少疲れの色が見え隠れしている万斉だった。
「誕生日故、いつもより上等な強い酒を買ったのが裏目に出たでござるな」
ずっと相手をしていて疲れたのだろう。万斉はそのまま部屋に帰って行った。ため息を一つ吐いて目の前の酔っぱらいに向き直る。
「お前、酒弱かったんだな」
「えーあたしおさけなんてのんでませんよう!」
頬を上気させ、とろんとした目で擦りよってくる名前は、普段の姿からは想像もつかない。そんな事を考えていると、どこからか包帯を持ってきて自分の頭に巻き始めた。
「たかしゅぎさんとおそろい!」
「っ、」
これは反則だ。無自覚な分、余計タチ悪ィ。
「……、んー」
「今度は寝たのか…忙しい奴だな」
いつの間にか寝息をたて始めた名前を、そのまま自室に運ぶ。せっかくの誕生日も、名前がいないなら意味がない。
名前を布団にそっと寝かせ、自分も隣に横になった。頭を引き寄せれば、幸せそうな無防備な寝顔。気付いたら、額に口づけていた。
明日の朝、隣にいる俺を見てどんな反応をするのか。
「――楽しみ、だな」
(んー……たかすぎさん……すきぃ)
(……眠れねェ)