「財前くん、誕生日プレゼント何がええ?」
「…、」
名前先輩がええです、と言いかけたとこで自主規制。こんな事言うたら引かれるわ。
「弁当が食いたいっすわ、……名前先輩が作ったやつ」
「あたしの手作り?そんなんでええの?」
「コンビニのパンも飽きてきたんで」
そう言いながらも内心ガッツポーズしていたのはここだけの話や。
……やのに
「……何でこうなるん」
「おー財前遅いでー」
「何してんですか謙也さん」
「先輩待たすなんてええ度胸やなー」
「何でいるんですか部長」
「ごめんな財前くん、何か着いてきてしもて」
先輩との待ち合わせ場所である屋上に、なぜか謙也さんと白石部長がいた。……そういえばこの人ら、名前先輩と同じクラスやったっけ。
「先輩達、目ざといっすわ」
「何の事やろなー」
「知らんなー」
敵意を込めて睨んでも、へらりとした笑みを返されるだけ。……ムカつく。
「……財前くん、怒っとる?」
不安そうに顔を覗き込んでくる名前先輩に気づいて、表情を弛める。そうや。せっかくの誕生日なんに、貴重な時間をこの二人に割いている場合やない。
「先輩、弁当食いたい」
「あ、そやね」
どうぞ、と可愛らしい弁当箱が差し出される。蓋を開ければ、文句なしに美味そうな中身。
「名前先輩、」
「うん?」
「食べさせてくれんの?」
ちょっと残念そうに言うと、先輩はしゃーないなぁと言って弁当を食わしてくれた。美味いっすわ、と先輩に伝えてから後ろに座っていた二人に笑みを向ける。勿論、さっきまで名前先輩に向けていたものとは違う種類の。
“ざ ん ね ん で し た”
顔をひきつらせた二人を見て、少しだけすっきりした。
(うあームカつく!アイツほんまに性格悪っ!)
(…今日のおやつはぜんざいやなくてたこ焼きに変更や)