指定されたホテルに行くとキャバッローネの部下の人にロビーへ通された。それほど待たない内に少し急いだ足音が聞こえてきて、彼が来たのだと悟る。
「名前!」
金色を靡かせながらこちらへ急ぐディーノは、少し申し訳なさそうな顔をしていた。気にしてないのに、と思いながら軽く手を振る。
……ちょっと待って、
……急、ぐ?
「ディーノ!急がなくていいから!ゆっくり!」
「は?…うわっ」
「わ、」
案の定私の目の前で転んだ彼の体が覆い被さってくる。成人男性の重みを支えられるはずもなく、私とディーノはそのままロビーの床に倒れ込んだ。
「……痛い」
「……ごめんな」
しゅんとするディーノは大人のくせになんだか子供みたいで、思わず笑みが溢れた。
「ふふ、」
「笑うなって…」
お前にはカッコ悪ぃとこばっかり見せちまうな、とぼそりと呟く。
「誰か連れてくれば良かったか…?」
「ううん、大丈夫だよ」
どうやら相当落ち込んでるらしいディーノに向かって笑いかけた。
「私はこういうところ全部含めてディーノが好きだからさ、今さら幻滅したりしないし」
「っ、」
「……それに」
部下の皆がいたらこんなことも出来ないし、ね。固まっているディーノの頬に軽いキスを落としておどけてみせれば、彼は照れたように笑顔を向けた。
(ハッピーバースディ、と覚えたてのイタリア語で伝えたら)(彼は頭を一撫でして、それから流暢なイタリア語で愛してると囁いた)