『……全員が零番隊に揃ったら話そうと思ってたことがあるの…零番隊が始動してから忙しい日が多かったから……なかなか話す機会がなくて遅くなっちゃって…
……でも、多季と彗の喧嘩のこともあったし…そろそろ話すことにするね…』





なまえは零番隊の広間に壱葉に頼んで全員を集めてもらった。皆、神妙な面持ちでなまえを見つめる。





『これから少し長くなるけど聞いてね』





なまえは優しく微笑んだ。それに一同は深く頷く。





『…私の斬魄刀の名は"神無"
始解の解号は"光を深めろ、闇をも深めろ鳴り響け神無"
…解号と同じようにこの刀は光を更に輝かすことができる。そして、それと同じように闇を更に暗く、重くさせることができるの。
私は…光は死神、闇は虚だと思ってる。理由は……私が死神の虚化ができるから』

「「「!!?」」」





多季と彗と礼は驚き、目を見開いた。壱葉と戒はその事実を知っている為か冷静な表情でなまえを見据えている。





「隊長…虚化が……できるんですか…?」





礼は恐る恐るなまえに聞いた。





『ん…私の斬魄刀はとても希少なものでね…斬魄刀を解放すれば私の中の虚が暴れ出す。私の中の虚と神無が繋がってるの。つまり"神無"は"虚と死神の魂を持っている"。
…斬魄刀の能力で闇を深めるということは、内なる虚を強力にさせることになる。
…それをコントロールするのが凄く難しくてね…結構疲れるの。
始解もしくは卍解をすれば虚が強くなってしまう。それを防ぐために私は私の力で封印をかけてるの。そのせいで私の体力と霊力は通常の2.3倍のスピードで失われていく。
私と斬魄刀のありえない滑稽な姿…そして神無の解号の"光"と"闇"という真逆の存在を一つの形として所持している異質な存在である私を…周りの者は"白黒"と呼ぶ。
私の持つ異常な力のせいで私は異端者…つまり、存在してはならない者だと言われてる。
五大貴族の一、みょうじ家の長女の私がそう呼ばれているのを家の者は皆知ってるわ。だから私は家の者とも少し距離がある。例え血の繋がった実の両親であろうとそれは例外ではない……次期頭首であろうと、ね…
両親は私ではなく、次に生まれてくる子に頭首の座を与えようと考えていたらしいけど…子に恵まれなかったみたいで…いい加減諦めたんだけどね』





なまえは笑みを消すことなく普段の優しい笑顔のまま話を続ける。
多季と彗は黙ってなまえの話を聞いていた。礼は目に涙をためながらも必死に涙を零さないようにしている。





『でもね…今は哀しくないよ。
もちろん昔はこの斬魄刀のせいで苦労することや自分を見失った時期もあった。
だけど…颯斗に出会って…いろんな人に支えられて…私にはたくさんの仲間ができた。隊長になって…優秀な部下たちを持てた。それだけで私は幸せよ。私には勿体無いくらい。
…だから私は皆を守るし、信じ続ける。……これが私の真実。私といれば他の隊以上に問題が増えることもある』





なまえは礼に歩み寄り、礼の瞳から零れた涙を右手で拭った。





『…それでも私の隊にいて、私の元で私を助けてくれますか?』

「「「「「勿論です、隊長!!」」」」」





五人は声を揃えて自分の気持ちを言葉にした。なまえの下でなまえの為に生きる覚悟を抱く。





『ありがとう』





なまえは五人の言葉を聞いてニコッと笑った。















零番隊の結束も強くなった。


颯斗との仲もより一層深くなった。


護廷十三隊の仲間も増えた。


全てが順調に進んでいるかのように思えた。


だが、幸せとは長くは続かないもので。


五十年の後


尸魂界に


零番隊に


颯斗に



…なまえに…





事件が起きた。