よく、大学で見かける人。
キラキラしていて眩しい程に輝く金色の髪はどこか優しげで…どこか儚げで…目立つ髪型だからか、それとも何か他に目を奪われるものがあったのか今となってはよくわからないけど……
気が付いたら、目で追ってた。
「サーボっ」
「うおっ!?びびった…お前かよ…」
「何その言い方ぁ」
彼の周りはいつも賑やかで…同じ大学に通う兄弟ととても仲が良いらしかった。
「おーいエース〜」
「お!サボっ」
「テンション高ェなお前…」
「聞いてくれよ〜」
いつ見ても明るくて…笑ってて…時々1人でつまらなさそうに頬杖をついて退屈そうに講義を受けていた。
『サボ、くん…』
いつも明るい彼は…誰かを好きになったりするのかなぁ…
『!』
偶然、本当に偶然なんだけど。
風邪を引いたみっちゃんの代わりにたまたま私の空き時間でみっちゃんが受ける筈だった講義のノートを取ろうと初めての講義を受けた。
そしたら、これも、本当に偶然……
「はい」
『…っ』
前の席に……サボくんがいた…
『…ぁ……』
「あーっ!サボいたー!」
「ぐっ…お前…タックルやめろぉ…」
サボくんから回されている出席表の紙は女の子が飛び付いた勢いで思わず握り締めてしまったのか、少しだけ皺が寄って……
『…………』
ああ…サボくんにはたくさん人が集まるんだね…今、もし、その隣にいる人が……私なら……
そんな気持ちをもみ消すように被っていたキャスケット帽子のつばを深く下げた。
「あれ…プリント落ちてるぞ?」
『あ…』
講義が終わって立ち上がったサボくんの足元に落ちていたプリント。
気付かない間に落としたらしいそれを拾い上げた彼の視線が私へと向かってくる。
もし…もしも私が今、サボくんの側にいるような女の子だったら……サボくんは…今……私にどんな顔を向けてくれたのかな…
『あり、が…』
「………だな……」
『…え?』
「…字、綺麗だな」
『…っ』
「サボサボ〜!見て〜これ!」
「ぐ…!重い……」
帽子のせいで狭い視界の中、おずおずと見上げた彼の表情は、太陽の日差しも交じってキラキラ輝く彼の金色の髪を更に輝かせた。
ああ…サボくん……
ずるいよ…
「もうプリント落とすなよっ」
『!!』
ずるいよ……サボくん……そんな、無邪気で優しい笑顔を向けられたら…私……
『……サボくんのこと、好きになっちゃったよ…』
***
サボくんの姿を追い始めて、1年が経った。
もうすぐ大学を卒業する歳になった私の恋は…きっと実らない。
「なまえーっ!」
『あ、みっちゃ、』
「聞いて聞いてーっ」
『う、くるし…』
あれ、何だかこの感じサボくんを思い出すなぁ
「エースくんとっ!合コン!」
『へっ…!?』
「だぁかぁらー!ご・う・こ・んv」
『あ、えっと…え…?おめ、でとう…?』
みっちゃんは私が今現在片思いしている人の兄弟のことが好き。つまり…エースくんのことが好き。
私とみっちゃんが違うのは、彼女はもう、思い人と接点があること。
エースくんに似合う女の子になる!と宣言した彼女はファッションやメイクに力を入れ始めて……入学当初より随分と雰囲気が変わった。
「おばかぁ」
『えっ…?』
「なまえもっ」
『え…?』
「なまえも、合コン行くのっ」
合、コン…
合コンってあれだよね…男女が出会いの場を設けた…親睦を深める……
え、私も…!?
『へっ、は…っ、え…!?』
「サボくん誘ったからねっ!エースくんも協力してくれるって言ってたし、3人で作戦練ろうねっ」
『ええええ、エースくんと…!?さ、ささっさぼ…ほぇ…っ、ええっ!?』
「ついででいいから、私も手伝ってねぇ」
『つっ!ついでなんてっ!わ、私にできることなら手伝うよっ!え、ほ、ほんとにさ、サボくん来るの…?』
「うん、でもサボくんバイトで忙しいらしいから来週になるけどねぇー…いっぱい話しかけて接点持った方がいいよっ」
結局、その日サボくんは来なかった。
サボくんが来ないだけでこんなにも…
寂しくて…悲しくて…残念な気持ちになる。
初めての、合コンだったんだけどなぁ……
私はサボくんのことを殆ど知らない。
名前と、兄弟がいることと、女の子にも男の子にも人気者で、明るいことと…後は……優しい、こと……
気付けばもう、
サボくん来なかった…
バイトだったねぇ…
あ、で、でも…!
エースくんにいっぱいアプローチかけたからっ
え…
あっ、違うっ!みっちゃんのことだからっ
うっわ、お前酒くせっ
サボくぅーんお前はぁ後悔するぞお〜
は?とりあえずシャワー浴びろよ
はは…ははっ…可愛いなぁ……
あ?またいい女でもいたのか?
いたかもぉ〜
………(なんかうぜェ)
結局ヒロインも一目惚れ