「………」





ポケットにいれていたスマホを取り出し、画面を数回タップする。
いつもなら通話履歴からすぐに見つかる彼女の名前も下にスクロールしないと見つからない場所にあった。

彼女の名前を見つけ、タップした直後プップッ…と機械音が聞こえてコール音に変わる。





「………」





無機質なコール音が鳴り止んで、次に聞こえてきたのはなまえの声、ではなくて。





≪お掛けになった電話をお呼びしましたが…≫

「………」

≪ピーという発信音のあとにご用件をお伝え下さい≫

「……なまえ…」





なあ、なまえ。今何してるんだ?何を思ってるんだ?1人で、泣いてるのか…?なまえ…





「ごめん」





ごめん。ごめんな、なまえ。おれ、全然余裕なくて。もっと優しくしてやりたいのに。おれはなまえのこと信用してるから、って言ってやれればよかったのに。

おれが、もっと強ければよかったのに。





「なまえ…好きだ」





どうしようもなく、好きなんだ。好きすぎて、なまえしか見えないんだ。
大好きだから、おれ以外の男と一緒にいる姿なんて見たくないんだ。わがままでごめん。勝手なやつで本当にごめん。
でも、これがおれだから……こんなおれをまだ、少しでも想ってくれてるなら……





「…会いたい…」





どうしようもなく、





「なまえに会いたい…」





なまえの顔を見たい。会って抱きしめたい。顔を見て、ちゃんと、謝りたい。





≪サボ…≫

「!!」





なまえだ……おれの好きな、なまえの声だ…





「…なまえ、今どこにいるんだ?」

≪…ず…っ、い、え…≫

「…会いたい。会って、ちゃんと話したい」

≪…っ、私、も…≫

「今から、会ってくれるか」

≪っず…うん…≫





3日振りに聞いたなまえの声はくぐもっていて。泣きすぎたせいなのか少し鼻が詰まっているようだった。





「…じゃあ、待ってるから」

≪…どこに、行けばいい…?≫

「…駅で待ってる」

≪…わかった、すぐ行くね≫





そう言って電話切ったなまえ。ああ、今から会えるんだな。どんな顔してんだろ。目は腫れぼったくなってんのかな…
きっと彼女はそんな顔を見られたくないだろうけどおれはどんななまえでも可愛いと思う。どんななまえでも愛せる。だから、別れようなんて思わないで欲しい。





『…!サボ…なんで……』

「…1秒でも早く、なまえに会いたかったから」

『…っ』





数分後、家から飛び出してきたなまえはノーメイクで服もいつもより地味だった。
予想通り腫れていた瞼を隠すように黒縁メガネをかけていても…おれにとっては、どうしようもなく可愛い女だ。





『わざわざ…来て、くれたの…っ?』

「地味になまえんちに来るの初めてだよな」





いつも駅まででいい、と言われ自宅まで送ったことはなかった。
彼女の父親が厳しいことは聞いていたし駅から徒歩3分程だったからおれも困らせたくないしいつも駅前で別れていた。
立派な一軒家の前で、おれとなまえは3日振りに再会した。





『サボ…あの、ね…本当に…』

「待ってくれ」

『…?』





話しかけたなまえを制止して俯きがちなおれは後頭部をガシガシ掻きむしってあー…っと間延びした声を漏らす。





「…ごめんな」

『!、謝るのは私だよ…っ』

「おれ、ほんと余裕なくて…ごめん」

『サボは悪くないよ…!』

「…なまえ、」

『なに…?』

「…おれのことまだ…好き、か…?」

『っ、ぐず…、当たり前、だよぉ…』





ボロボロと大粒の涙を目尻から流すなまえ。ああ、おれ重症だ。おれのせいで、自分を責めて泣いている彼女の泣き顔でさえも、こんなにも愛しい…





「…おれも、なまえの事好きだ」

『サ、ボぉ…』

「…だから、もうおれから離れないでくれ…」

『ん!う、ん…!』





小さな彼女を優しく抱き留める。
ああ…こうするのも随分と久しぶりな気がする。もう、なまえ以外の女を抱き締めるなんてできないな…





「…怒鳴ってごめんな」

『私も…ごめんなさい…っ』

「疑ってはなかったんだけどさ。…嫉妬した。めちゃくちゃ」

『ん、もう、会わないから…!』

「うん、わかってる。だから、明日からちゃんと学校に来て」





ミッチーとエースが心配してたぞ、って伝えるついでにおれもなまえに会いたいからって耳元で囁いた。





『サボ、大好き…!』

「おれも。」





付き合って初めて、なまえと喧嘩した。
喧嘩はできれば勘弁して欲しいけど…きっとそうはいかない。だけど、もしまた喧嘩したら…こうして、仲直りしような。











喧嘩した後は仲直りをする。





なまえー心配したよぉー
みっちゃん…!ごめんね…エースくんも…
いや、おれたちは大丈夫。というかサボの方が重症だったから。
え?
なまえちゃんと喧嘩してからサボの作る飯がマズイのなんの…あのルフィが飯いらねェって言ってたぐらいだし。
あ!だからお前ら外出ばっかしてたのか!
これで漸くまともな飯にありつける
お前らしばらく飯抜きだ!
あ、じゃ、じゃあお詫びに私が作るよっ
え!?
まじ?ラッキー!ルフィも喜ぶよ
ふざっけんな!!



シスター様、リクエストありがとうございました!
更新、遅くなってしまってすいません。
今後もよろしくお願いします!