「何とか"大将黄猿"到着まで持ちこたえろ!!」
『(ボルサリーノさんか…!よ、良かった…!!叔父さんじゃなくて本当に良かった!!!)』
「そんなに待ってられるかよ………」
大将が現れる云々の前にスティンはただただサカズキでないことに安堵する。
そんな彼女の隣にいるローは呟きながらずっと手にしていた海兵の頭をやっと放し、仲間の海兵たちへ無造作に投げた。
「ぎゃああああ、生首〜!!」
「ちょっと落とさないで!!」
「何で喋れるんだ!?」
「わかんねェ、体が熱い!!」
「体ないだろ!!お前の体あそこでコゲてるぞ」
「アレが熱い、体が熱い!!」
「えェ!?感覚あんのか!??」
完全にローの珍しい能力に対してパニックを起こす海兵達にローは遠慮なく能力を発動する。
「とにかく!!あいつの作る"サークル"には入るな!!!」
「"ROOM"」
「「「!!」」」
「コレの事か?」
「そうコレコレ」
頭だけの海兵が答えた瞬間、ローは刀を数回振るった。それによって海兵達の体は頭だけの男同様見事にバラバラにされる。
「どわああああ〜〜〜っ!!!」
「気を楽にしろ、すぐに終わる」
スティンもローのサークルに収まりきらなかった海兵たちを斬り、ルフィもキッドもそれぞれの能力で海兵を倒した。
「あーあー…暴れちゃって、船長とスティン…」
「気の早い奴らだ…」
オークション会場から出てきたシャチが呟き、キラーもキッドたちの戦闘に呆れ気味に言葉を漏らす。
オークションハウスを囲んで陣形を組んでいた海兵は見事に倒され、スティンはオークション会場の屋根にいる狙撃兵を狙って刀を振るった。
『剋蒸栄鐘!』
「うわぁあああ!!?」
ガラガラガラ…ッと激しい音を立てて崩れ落ちる建物の壁。スティンは首の骨をポキポキ鳴らして一息つく。
力を使った反動により体が縮んだルフィを見てローは面白そうに声をかけた。
「何だそりゃあ、麦わら屋…締まらねェなァ……!!」
「そうか?」
「これでひとまず"陣形"もクソもねェだろう」
『え…!なに、ルフィ…!?ちょっと……可愛すぎる!!』
スティンは小さくなったルフィを見て思わず抱きしめる。だが、即座にローに頭をわし掴みされたスティンは痛みと恐怖によりダラダラと冷や汗を流した。
「……スティン……お前…自分が何してんのかわかってやってんだよなァ……?」
『え……ごめんなさい……』
海軍の援軍は増え続け、主犯であるルフィだけでなくほぼ同罪のローやキッド海賊団を捕える為に銃器を構えている。
「来たな。もう向こうは作戦なんかねェ…後は大乱闘だ……!!!それじゃあな、麦わら…!!お前に一目会えてよかった…次に出食わした時は容赦しねェ…………!!」
「…………ふーん。でもワンピースはおれが見つけるぞ!!!」
「「『!!』」」
その言葉に三人は反射的にルフィに目をやった。
そんな中、ジッとルフィを見据えるキッドに大きな斧を振りかざした海兵を戦闘員のキラーが防ぎ、装備された刃物で斬り裂く。
「おい、キッド!!!何をつっ立ってる」
「なァ、キラー……!!おれ達の通って来た航路じゃあ…そんな事口にすると大口開けて笑われたモンだ。その度におれは…笑った奴らを皆殺しにして来たがな…………!!
だが、この先は…それを口にする度胸のねェ奴が死ぬ海だ…!!"新世界で会おうぜ"」
キッドの言葉にローは口角を上げ、スティンも楽しそうな笑みを浮かべた。そんな彼女に目をやったキッドは唐突に尋ねる。
「スティン……まだあの時の返事を貰ってねェぞ」
『…ああ………、そうだったね。…キッド、気持ちは嬉しいけど……私はローと一緒に海を渡るよ』
「……………、そうかよ。……おい、トラファルガー…!ちょっとでも隙見せたら……この女貰うからな」
「テメェが入る隙間なんてねェよ、バカ野郎」
「ヘェ……?」
苛立たしそうにキッドに言い切ったローの言葉にキッドは意味深に笑みを浮かべると、あろうことかスティンの首筋に噛み付いた。
『痛っ…!!?』
「ハッ!隙だらけじゃねぇか!」
「ユースタス屋!!テメェ…!!」
「あばよ、スティン」
『ぇ……あ、あの…、ちょ……!!』
突然キッドに噛みつかれ、呆気にとられるスティンの背後にいるのは鬼の形相のロー。スティンはそんなローの表情に息を飲む。
『(ひっ…!!)』
「ユースタス屋、絶対ェ殺す!!!!」
『(キッド……勘弁してよ…!!?)』
先に進んだキッドの背中を見ながらスティンは心の中でそう叫んだ。