スティンはエースと別れてすぐ馬を発見し、その馬に乗ってアラバスタに向かっていた。





「(ここからアルバーナまで約1日ぐらいかな…ルフィに仕込んだ黒電伝虫から音が拾えなくなった)
…何かあったのかな…?」





スティンは真っ直ぐアルバーナへ向かう。あまり休むことなく走り続けて約1日が経過した頃、彼女の視界に城と城内から上がる煙が見えてきた。





『あ、やっと見えた…騒がしいな…』





肉眼ではっきりと城を捉えてから、戦う人間たちを見たスティンは馬から降りて馬を逃がす。スティンが現在いる中で最も近いのは南東ゲート。つまり、現在ウソップとチョッパーが戦っている場所。
先程から爆発音が鳴りやまないこともあり、スティンは急いで走り出した。





「待てーっ!!!」





必死に逃げる長鼻のウソップに突進に近い様子で近付くチョッパー。





「危ない!!!」





ウソップに向かった野球ボールらしきものはカーブ球となり、それを敵が打ち上げたことによってスピンがかかる。そのスピン球はウソップの背後へ向かい、直撃しかけた時
ボゥン…ッ!!
ウソップに直撃することはなく、何かと衝突したことにより何もない場所で爆発した。





「は…!?あ、あれっ!?」

『ふー…危なかったぁ…』





わざとらしく額の汗を拭う仕草を見せるスティン。ウソップはスティンの肩に担がれている。





「「スティンっ!?」」

『や!応戦に来ました!』





にこにこ笑いながら敬礼ポーズをとるスティン。ウソップたちが相手にしていた敵はスティンを見て唖然とした。





「お……お前は…!マリーネ・スティン!!"白ひげ"の十七番隊隊長が…なんでこんなところに…っ!」

「ええ!?た、隊長!!?」

『……私ってそんなに有名になったのかな』





スティンは小首を傾げながら頭をかき、ウソップをそっと肩からおろす。





「なんでアンタみたいなヤツが…こんなところにいるんだいっ!?」

『んー……気まぐれ、かなぁ?』

「…っ、気まぐれでアンタを相手にしなきゃいけないなんて…!!」





冷や汗ダラダラのモグラのようなおばさんを見ていたスティンは化け物みたいな言い方だな…と少し眉根を下げた。





「な、なんだよ…お前そんなに強いのか!?」

『知らない。世間の私の評価なんて興味ないもの』





チョッパーの質問を軽く流して、スティンは腰に差してある鞘から細身の短刀を抜き、バックから数枚の紙を取り出す。





『まあ、これぐらいでいっか……ねえ、一つ聞きたいんだけど…』

「な、なんだ!?」





自分の隣にいるチョッパーに顔を向け、質問したいというスティンにチョッパーが聞き返すと、今度は目の前の敵に顔を向けた。





『私の手助け、いる?』

「…ああ!!」





チョッパーの言葉にスティンは嬉しそうに口角を上げ、勢いよく短刀を持ったまま右手を上げる。





『…だって!ということでぇ…スティンちゃんもこの戦争に参加しまーすっ!』

「ちっ…!厄介なヤツが現れたもんだよまったく…!!」





先に仕掛けたのはスティン。スティンは紙を短刀で細かく切り裂いた。すると相手も動きだし、くしゃみをした犬から砲弾がスティンに向かって飛び出してくる。





「スティン!ミスMC(メリークリスマス)は"モグモグの実"のモグラ人間だ!もう一人のMr.4は"4番バッター"でその犬がくしゃみをしたら出てくる砲弾をこっちに打ってくる!!」

『へぇ…?変な能力者!』





スティンは先程切り裂いた紙切れを宙に浮かせると、しなれていた紙がピシッと力が入ったように真っ直ぐになった。





『切り裂け』





自身に向かってきた砲弾に一枚の紙切れが向かう。すると、ただの紙がいとも簡単に砲弾を真っ二つにしてしまった。





「「「なっ!!?」」」





ドスッと鈍い音をたてて砂の上に落ちた砲弾。爆発することもなく鉄の塊としてスティンたちの目の前にある砲弾にミスMCもチョッパーもウソップも口をあんぐりと開けて驚く。





『……さて…私に攻撃することができるかしら?』





ふふっと不敵な笑みを浮かべるスティンの攻撃が始まった。