『エース!』

「よし、行くか」





ルフィ達を逃がし、スモーカー率いる海軍を撒いた2人はルフィ達の船へとストライカーで向かう。





『…いた!このまま真っ直ぐ!』

「わかった」





ルフィ達の船へ近付くと、ルフィの笑い声が聞こえてきた。エースがストライカーをルフィの船にロープで結び、船の上に飛び移る。





「お前が誰に勝てるって?」

『まだまだエースも若いよ?』

「エ〜〜〜ス〜〜!!スティンーっ!!!」

「よう」





スティンはニコッと笑った。すると、ルフィの仲間であろう金髪の男がクルクル回転しながらスティンに近付いていく。





「美しいお姉さまあ〜v」

『え?』





スティンが首を傾げる一方で、エースはルフィの仲間たちにぺこりと頭を下げた。





「あー、こいつァどうもみなさん。ウチの弟がいつもお世話に」

「や、まったく」





本来、お世話になっていますと挨拶すれば返ってくる言葉は、いえこちらこそ。だが、ルフィの仲間たちから返ってきた言葉はその通りと肯定する言葉で、スティンはいろいろ迷惑かけてるんだろうなぁ…と苦笑する。





「エース、スティン…何でこの国にいるんだ?」

『あれ?ドラムで伝言聞いてない?』

「ドラムで?」

「あー、いいさ別に。大した問題じゃねェから」





スティンはエースの隣に腰をおろし、投げ出された足をプラプラと振った。





『とにかく会えてよかったよ。ちょっと用事でこの辺の海まで来ててね。ルフィに一目会っておこうと思って』

「ルフィお前…ウチの"白ひげ海賊団"に来ねェか?もちろん、仲間も一緒に」

「いやだ」





エースの誘いにルフィは即答でNOと返した。ルフィの予想通りの答えに笑みを浮かべるエースとスティン。





「"白ひげ"…"白ひげ"ってやっぱその背中と腕のマーク、本物なのか?」

「ああ、おれらの誇りだ…」





エースの背中とスティンの右腕には同じように"白ひげ"を現す刺青が彫られている。





「"白ひげ"はおれの知る中で最高の海賊さ。おれはあの男を"海賊王"にならせてやりてェ…ルフィ、お前じゃなくてな…!!」

「いいさ!だったら戦えばいいんだ!!」

「…………」





ルフィの迷いのない言葉にエースは口角を上げた。





「オイ、話なら中でしたらどうだ?茶でも出すぜ。もちろんお姉さまには極上のおもてなしをv」

『ふふ……お気遣いなく。私たちの用事は大したことないから』





金髪の男の誘いを丁寧に断るスティンの横でエースは一枚の正方形の紙をルフィに渡す。スティンもバックの中からエース同様一枚の紙を差し出し、ルフィはそれを受け取った。





「ホラ」

「ん?」

「そいつを持ってろ!ずっとだ」

「なんだ紙きれじゃんか」

『そう。その紙きれが私たちとルフィを引き合わせてくれる。私は常にエースと一緒にいるから渡す必要は無いかと思ったんだけど…何かあった時の為に一応、ね』

「ふーん」





紙を見つめて興味のなさそうな声を上げるルフィにエースが声をかける。





「いらねェか?」

「いや…いる!!」

『失くさないでね』





にっこり笑ったスティンにルフィもああ!と頷いた。





「できの悪ぃ弟を持つと………兄貴は心配なんだ。おめェらもコイツにゃ手ェ焼くだろうがよろしく頼むよ……」





エースは兄として優しい笑顔と共にルフィの仲間に告げる。





『ルフィ!』

「ん?」





スティンはルフィに歩み寄り、ルフィの頬に軽くキスをした。





「「!!?」」

「ルフィ!テメェ!何てうらやましい!!」





ルフィの仲間たちが驚きを隠せない中、ルフィとスティンは笑顔のまま見つめ合う。その傍でエースはものすごく不満そうな顔を浮かべているが。





『久しぶりに会えて良かったよ!また会おうね!』

「おう!」

『皆さんも、また今度ゆっくりお話出来たらいいね』

「もちろんでーすっ!v」

「会ったら声、かけてね」





金髪の男とオレンジ髪の女にそう言ってもらい、スティンは嬉しそうに笑った。すでにストライカーに乗っているエースの元に飛び移るスティン。





「ええっ!!?もう行くのか!!?」

「ああ」





船につけていたロープを外し、エースはルフィに告げる。





「次に会うときは海賊の高みだ」

『元気でね!』





エースとスティンはストライカーを走らせ、ルフィ達の船から離れていった。





『エース、前方注意』

「おう」





エースとスティンの目の前にはバロックワークスの船が5隻。





「いくぞ!!!こっちは50人の"ビリオンズ"!!!余裕だぜ!!!」

「船5隻!!抜けれるもんなら抜けてみろカナヅチ野郎!!」





前方で騒ぎ立てる男達の声にエースは口角を上げるが、対照的にスティンは眉間に深いしわを寄せる。





『…何、アイツら…能力者をバカにしてんの?それとも私たちだからバカにしてんの?』





ムカつく、と言葉を漏らしたスティンは苛立った様子で自分の左手を目の前に突き出した。だが、その手をエースが無理矢理下げる。





『…手を出すなってこと?』

「ああ」

『…わかった』





スティンは渋々手を下ろし、バロックワークスの船に驚くほどの脚力で飛び移った。





「うわ!女が乗り込んできたぞ!」





撃て撃て!とスティン目がけて銃弾を発砲するが、彼女はそれを身軽に避ける。そんな中、エースはストライカーを水中に潜らせバロックワークスの船の上を飛び越えた。海に落ちるかと思われたが、浮かんできたストライカーにスティンもエースも着地する。





「げっ」





ストライカーに飛び移ったエースは身を翻し、右拳を炎で包み込んだ。





「"火拳"!!!」

「うわああああああ!!!」





ボォォ…と炎の燃える音を残し、5隻の船を全て燃やしきってしまう。





「来いよ"高み"へ…ルフィ!!!」