「スティンはさ、なんでここにいんだ?」
『じぃちゃんに拾われたの』
お昼寝しているルフィを置いて、本日の晩ご飯のおかずの魚を川辺で釣っているエースとスティン。
のんびりとした時間が流れていた。
「じじいのプライベートで?」
『ううん。海軍のカッコしてたからお仕事中』
「そういうのって施設に送られたりすんじゃねーの?」
どこまでも直球なエース。スティンも特に気にした様子ではないので会話は続いていく。
『うん、最初はその予定だったみたい。だけど一番最初に送られるはずの施設が火事で焼けちゃっててね。次に紹介してもらった施設はもう人がいっぱいらしくて。その後の施設は男の子だけで、最後に行った施設で……わ!』
「なんだ!?」
勢い良く竿が引っ張られ、スティンは魚を釣る為に精一杯竿を持ち上げた。
『ねぇ、これってどうしたらいいの!?』
「とにかく引っ張れ!一本釣りだ!」
『一本釣りって何!?』
スティンはよくわからないまま力任せに竿を川とは反対方向に引っ張りあげる。それにより、魚が水を飛ばしながらスティンの頭上で跳ねた。
『わあ、釣れた!!』
「今日の晩飯ゲットだな」
『やったー!』
釣った魚を掴みあげ、喜ぶスティン。バケツに魚を入れて再び木の幹に座り、餌を川に投げる。そして再び魚がかかるのを待った。
「…で、最後の施設はどうなったんだ?」
『あ、そうそう。最後の施設に入れたのはいいんだけどそこにすっごく嫌な男の子がいてね?虫を投げてきたり、人の物とったり、壊したり…』
「なに?」
スティンもその子にイジメられたのかと思い、エースの片方の眉が上がる。
「それで?」
『私も入ったその日に他の子と同じようなことされたの』
やっぱり。そう思ったエースは見たこともないその少年にふつふつと怒りがわいてきた。
「…スティンも、やられたんだな…」
『ううん、こらしめてやったの。すぐにノびたよ…2、3発しか殴ってないのに』
「……え?」
『でもね?私、絶対悪くないのにそこの院長さんが"こんな野蛮な子、うちでは預かれません"なーんて言ったの。
で、じぃちゃんが私を引き取りにきてくれて丁度私と同じぐらいの年の孫たちが元気に育ってるからお前もそこに行くか?って聞いてきてくれたから施設に入るよりいいかな、って。命の保障はできんぞって言われたんだけど』
にっこり笑って言うスティン。
どうやらエースが想像していた"おしとやかな女の子"とは似ても似つかないようだ。
だが、好奇心旺盛で明るい普段のスティンを見ているとそんなことはすぐにどうでもよくなっていく。
「……ふーん。じゃあ、スティンは元々ここに来る予定じゃなかったんだ」
『そうだよ?偶然が重なってここに来たの』
「…そっか…」
たまたまガープに拾われてたまたまどこの施設も入れずに最終的にガープに命の保障抜きで連れられてきたのがたまたま年の近い子がいるこの島だったというわけだ。
そして、そんなスティンとたまたま出逢えたのがエースとルフィ。
『……けど、施設に入るよりこっちの方が楽しいと思う』
「そうか?」
『うん!ルフィとエースがいるから!施設の大人の人とか皆私のこと"不運"だとか"可哀想な子"だっていうけど………私の今までの偶然って幸せだよね!きっと、施設に入ってた方が不運だよ!』
「……ははっ…かもしれねェな!」
偶然がくれた恋だった。
(偶然が重なったら必然になるんだって)(へぇ、そうなのか)(うん、そう言ってた)
(…誰が?)(最後の施設の院長さん。"きっと偶然と言う名の必然なのよ"って。"だから追い出したわけじゃないからね"って)
(……それ、完全に言い訳だろ)
その後、スティンとエースは魚をいっぱい釣って、塩焼きにして晩ご飯のおかずした。