私の彼氏は、
パッツンで仏帳面。
眉間にしわが寄ってて、少々怒りっぽい。
ファーストネームで呼ばれるとキレる。
蕎麦ばっかり食べる偏食者。
とっても口が悪い。
「おい、なまえ」
教団内をテクテク歩いているとふいに声をかけられた。
振り返るとそこには前髪がパッツンの綺麗な顔立ちをした神田ユウ…私の彼氏がいた。相変わらず眉間にしわが寄ってて感情は読み取れない。
『どうしたの?』
「飯食ってねェだろ、行くぞ」
『あ…うん…』
私の彼氏はとっても強引です。
食堂に行くと見慣れた赤髪青年が。
「ユウー!なまえー!」
『あ、ラビ…ラビもお昼ご飯食べに来たの?』
「そうさー」
「おい、バカ兎。俺のファーストネームを呼ぶんじゃねェ」
ラビに対してお決まりのこの言葉。もう、何度聞いたことか。そしてラビもやめようとしない。中々のメンタルの持ち主だ。
『ジェリーさーん!私オムライス!…ユウは?』
「蕎麦」
…またこれ。
ユウは蕎麦人間。毎日蕎麦を食べても飽きない。口が恋しくならないのか。
『また?』
「ユウは蕎麦しか食べないさー」
「うるせェ」
あ、眉間のしわが濃くなった。
『美味し?』
「ああ…」
あ…嬉しそう。
ユウの幸せそうな顔は(なかなか見分けがつかない)蕎麦で見れる。そう思うと、ユウの幸せって結構簡単に手に入るのかな…
『ユウはどうしてお蕎麦が好きなの?』
「美味いから」
ユウは無口キャラなんだよね。えーっと…クールキャラ…?
「なまえのオムライス美味そうさー!」
『食べる?』
ラビの口にオムライスを乗せたスプーンを持っていくとラビはパクッと食べた。
そして、美味いさーと言って笑う。ラビは弟みたいなんだよねー。うん、その屈託のない愛嬌のある顔が可愛い。
「蕎麦ってそんなに美味いんさ?」
そう言って今度はユウのお蕎麦を口にした。
『あ』
「んー…まあ美味しいのは美味しいけど毎日食べるとさすがに飽きそうさー…」
ラビ、そんな話はいいから早くここから離れた方が…
「…っの兎!人の蕎麦食ってんじゃねェぞ!ブッ殺す!!」
「ヒッ!!」
六幻抜刀、災厄招来!なーんて叫んでラビを追い回すユウ。ラビは私に助けを求めてるけど面倒事はごめんだから見なかったことに……(ごめんね、ラビ)
「いい加減にしやがれ糞兎が!!」
「ごめんさー!!」
それにしてもユウは本当に口が悪い。
そんなだからいつの間にか敵ばっかりできちゃうんだよ…
『…お帰り』
「チッ…」
ラビに制裁を与えたユウが戻ってきた。ラビは……医療班に運ばれてる…何も六幻で攻撃しなくても…
………ん?ユウ…まだイライラしてる…?お蕎麦を食べた仕返しはしたのに……
『ユウ?何怒ってるの?』
「……別に」
ユウは全然素直じゃない。暴言は吐くし、思ったことは考えるよりも先に口が動いてる。
だけど、こういう時って何も言わないんだよねー…天邪鬼ってゆーんだっけ、こういうの。
『ねぇ、何に怒ってるか言ってくれなきゃ私、わかんないよ』
首を傾げながら聞くとユウは思い切り私を睨んできた。それに少し驚いた私は目を見開く。
「……なに兎に飯食わせてんだよ…」
飯を食わせる…?
……ああ…、オムライスのことね。
『……それで怒ってたの?』
「…………」
なに、それ。
嫉妬じゃん。
私が使ってたスプーンでラビにあーんってしたから拗ねてるんでしょ?
『…ごめんね?』
怒っているユウの唇に私がキスをするとユウは慌てて口を押さえて顔を真っ赤にさせた。
…ああ……ほんと、可愛いなー…
『ねえ、ユウ…』
私はユウの耳元で呟いた。
『大好き』
私の言葉にユウは更に顔を真っ赤にさせた。
私の彼氏は一見冷たくみえるけど
本当は優しくて
可愛くて
人のことをしっかり見てるとってもいい人。
口が悪いのは素直じゃないだけ。
怒りっぽいのは裏表がないだけ。
本当はいい所がいっぱいあるの。
私にとって、
ユウは最高の彼氏なのです。