この地の冬は早く、長い。噂には聞いていたが、これ程とは思わなかった。ストーヴをつけてもあまりあたたまらない部屋で、やかんを火にかける。
(・・・寒、)
それにしても今日は一段と冷える。窓の外を見ると、快晴。昨日のうちに降り積もった雪が、太陽の光をきらきらと反射していた。
(ん、雪・・・?)
慌てて戸をがらりと開けると、一面の雪景色。昨晩はうっすらと被っている程だったのに。少しだけ掬い取ると、指先がじんと痺れる。
(朝ご飯を食べたら、散歩に行ってみようかな)
そんなことを考える自分に苦笑し、戸を閉める。シュンシュンとやかんが鳴り、湯が沸いたことを知らせた。
(・・・寒い)
上着を着こみ手袋をつけ、マフラー(今年の秋、自分用に編んだやつだ。白の毛糸に銀が混ざっている)をぐるりと巻いたにも関わらず、冷気に思わず身を震わせる。綾音はちいさな林を通り抜けて川沿いを歩き、いつもの八百屋で買いものをするという定番コースを行くことにした。足元でしゃくりしゃくりと雪が鳴る。しんとした空気に、一人分の二酸化炭素が溶けていく。(・・・静か、)
雪が音を吸収するというのはどうやら本当らしい。林も川も、いつも以上に静かだ。動くものすら見当たらない。
世界でひとりきりになったみたいだ、と思う。
ひとりきり。
それはなんてかなしくて、せつないことだろう。きっと人間も兎と同じに、寂しすぎると死んでしまうのではないかと思う。
現に、自分は今あの人ひとりがいないだけでこんな生活を送っているのだ。
(帰ろうかな、)
考えごとをしていると、川沿いを随分下流まで来てしまっていた。帰りはやけに足が重い。八百屋は少し家でゆっくりしてからでいいや、と考え直す。冷たすぎる風に、また一人体を震わせた。
(あ、れ)
家の前に、誰かいる。距離が遠い為顔かたちまではわからないが、男であることは確かだ。身なりもみすぼらしい、というわけではないが、ひどく汚れている。
泥棒だろうか、と身構える。大きなだけの古い家に金目のものがないことなど、わかりそうなものなのに。この家は遠い親戚のものだったらしく、その方が老衰で死んで譲り受けた。買った当時は立派な屋敷だったのだろうが、長い年月が経つと掃除が大変だと恨みごとのひとつも言いたくなる。
そんな家に、しかも一人じゃなく複数で、一体何の用だろう。この距離から見る限り、とてもじゃないが柄が良いとは言えそうもない。
綾音の存在に気づいたのか、一人が此方を向き、大きく手を振った。
「すみませーん!」
この声。
あいつに似ている。
自然と足が早まる。
「一晩だけ、泊めて頂いてもよろしい・・・か・・・」
「こた、ろ」
「・・・綾音、か・・・?」
泥にまみれた旧友たち。
その中には、目を見開く銀色が、確かにあった。
白色の景色に、波紋
解り難いけれど、そこには確かに、
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