眠れない夜が久々に訪れた。

布団の中で睡魔に襲われるのを待っていたが一向に来る気配がせず、外の空気を吸いに縁側へ出ることにした。
日中の騒がしさからは想像できない程に夜の屯所は静かになる。
今日も一日頑張ったので皆疲れているんだろう。私も早く休んで、明日も頑張らなきゃ
そう思えば思う程目は冴えてくるから不思議だ。

「なんでィ、お前もいたのか」
「沖田隊長」

どのくらい経っていたのだろうか
冷たい風に吹かれながら夜空を見上げていたら背後から誰かが来る気配がした。緩めていた気を慌てて引き締めたが、声を聞けば自分が所属している隊の隊長だと分かりまた緩める。
そんなんじゃあっという間にやられますぜ、なんて言いながら沖田隊長は普段から寝る時に着けているアイマスクを首元に下げこちらへ近づいてきた

「こんな綺麗な夜は皆活動お休みですよ」
「なに温いこと言ってんでさァ」
「いいじゃないですか。見てください、満月ですよ」
「ふーん。団子でも食ってたのか?デブ」
「食べてません」

そのまま隣に座った沖田隊長と2人で時間を持て余していたがやっぱり眠気は来なかった。
随分と静かだけれど隊長は寝てしまったのだろうか、横をちらりと盗み見たら隊長と目が合った

「なまえ」
「なんですか?」
「いつまで敬語使ってんですかィ」

逸らすことを許されない視線でこちらを見つめる彼にどきりと心臓を鳴らす

「一応屯所なので」
「皆寝てらァ」
「万が一、なんてことも」
「ありやせんよ」

ぐっと距離を縮めてきた彼から逃れる為に横へずれたが、支柱にぶつかってしまう
私の右手に隊長の体温を感じた時には先程よりもずっと近い距離に隊長の、いや、総悟の顔がある。

「わかったから、総悟」
「ん」

名前を呼び、敬語を外せば満足したのか距離を取ってくれた。
真選組の人は、いや、私達以外はこの関係を知らないし伝えるつもりも今の所はない。
いつかそういう時になったら伝えようと2人で約束をした。

「………なまえ、斬り合い出るのやめろ」
「は?」

重ねていた手を握り締め、空を見上げたかと思えばいきなり何を言うんだこの男は。
それはつまり、真選組の仕事をやめろということだ

「いくら彼氏でも、私だって近藤さんに着いてきたんだ。そこまで口出しされたくないよ」

私達が集まる理由なんて彼以外ないだろう。
それを今更やめろと言われても了承できる訳がない。
強い意志を持って総悟を睨もうとしたが、それは叶わなかった。

「な、にいきなり」

ゼロ距離だった総悟の顔がゆっくり離れていく。今、そういうタイミング?本当に読めないな、この男は。

「ほんと、その辺の女にはねえ目だ」
「なにそれ……」
「そんななまえだから一緒にいたいってことでさァ。……心配すんな、お前に何かあることはねえよ。お前の背中は俺が護るからな」

………本当にこの人はズルい。
普段は死ぬほどドSだし、仕事はサボるし建物破壊するし、約束とはいえ仕事中全く私に目もくれないくせに
本当は私の事そんなに好きじゃないのかな、と感じていた不安をほんの数秒で忘れさせてくれるんだ。

「そろそろ寝るぞ」
「うん。おやすみ」
「あぁ」

2人で立ち上がり、また明日と手を振る。
さ、自室に戻ろう。もうそろそろ寝れる気がするんだ
そう踵を返そうとしたが、引っ張られた腕によって叶わない。
バランスを崩してよろけた体は元凶である総悟によって受け止められた
文句の一言でも言ってやろう。
そんな気持ちは、彼の顔を見上げた瞬間に消えてしまった。
モドル

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