「探しに来てくれへん…」

教室を飛び出して早15分。授業中のせいか、ユウジが来てくれることはなかった。

…いや、別に探しに来んでもえぇ!もうあいつとは別れるんや!あんなやつ知らんわ!
常にポケットの中に入れてた携帯を取りだし電源を入れる。私、意外と真面目やから携帯の電源切ってんねん。偉いって?知ってる知ってる。

パッと明るくなる携帯の画面に表示される着信件数やメール受信。それは凄まじいものだった。

見てみると小春ちゃんやら小春ちゃんやらどこから聞き付けたか知らないが白石もあった。…何でお前やねん。白石が知ってるからか、謙也からも来ていた。メールも同じ人間だ。小春ちゃんは戻ってきてとあったり謙也は一氏心配しとるで!ととりあえず私を元気付ける内容だったり。
そして鬱陶しい白石からは名前ちゃんもわかってるんやろ?とたった一文。
あいつは何だかんだで一番よくわかってる。
そう。ユウジが誰よりも嫉妬しやすくて束縛するってわかってる。わかってて何で私はこうしているか。その理由はただ一つ私もめっちゃ嫉妬深い。そしていっつもいっつもいっつもいっつも!自分勝手で遊びに行くって決めてた日も小春と遊びにいくことなったからって言ってドタキャンされてそれが本当に悔しかった。彼女なのに小春ちゃんに負けてるっていうのが本当に悔しかった。



「そろそろ授業でやな…」

重たい腰を持ち上げようとした時だった。授業中にも関わらずドアが激しく開いた音がしてびっくりして視線を扉に向けると、そこには息をきらしたユウジがこちらを睨んでいた。

「ユウジ…」

「お、前!なんで携帯持ってて電話でぇへんのじゃぼけ!」

「は…?ユウジからなんか一個も…」

トップ画面に戻ってみるとそこには新しい新着。履歴には一氏ユウジの文字がいくつものっていた。

「気付かんかった…!?」

「心配かけんなやぼけ…!」

気付くと私はユウジの腕の中。怒ってたはずが抱き締められただけで薄れていた。単純すぎるな私。

「小春…」

「え?」

「俺が小春って言っていつも小春を隣にいさすんはお前と2人っきりやったら心臓もたへんからや。」

「な、に?急に」

「えぇから聞けや」

「…でも、小春ちゃんおったらずっと小春ちゃんと喋ってるし私と会話することもないやん」

「それは、目合わせてしもたら俺倒れてまうし」

「…」

「今こうやって抱き締めてんのも顔見られたら困るし…」

「…」

「とりあえず、俺はお前が思っとる以上にお前に惚れとんねん!」

びっくら。今なら目から白石が出せるほどびっくりした。ユウジに好きと言われたのも告白されて以来だ。白石のメールはもしかするとこういう意味だったのかもしれない。

「…口開けば小春ちゃんでせっかく2人きりやのになんも恋人っぽいこと出来んくて寂しかったし」

「おん」

「私より小春ちゃんの方が大切なんやって思った。」

「…」

「私がおってもおらんくても一緒なんやったらもう別れよかなともさっき考えてた」

「は!?」

「デートもドタキャンされるしもう嫌になったから。でも、ユウジは探しにきてくれたし、心配もしてくれた。理由は微妙やけど抱きしめてくれた。」

「そら彼氏やねんから当たり前やろ。」

「うん、だからもういいねん。ユウジ好き!」

顔を上げてユウジの顔を見て言うと、ユウジの顔はみるみるうちに赤くなっていった。
あれ、こんなユウジみたことないぞ。

「どっどあほ!こっちみんな!」

「えへへー。ユウジめっちゃ好き!」

「だぁぁぁあ!死なすど!」

「ユウジに殺されるなら本望です。」

「!」


嫉妬深いのは私だけだったのかも。いやでもユウジも相当な嫉妬野郎だな。お互い様だ。でも、こんなに愛されているなら嫉妬野郎でも浮気野郎でも全然良いかなと思った。



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