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師匠が髪を切った。

ばっさり、と言う程では無いけれど、親しい人間が見ればわかるくらいには。
セットしなければ肩より長かったであろうそれは、肩の少し上で整えられている。

「どうしたんです、急に」

俺の問いに、師匠は。
小さく首を傾げながら一束、顔の横にかかった黒みのある赤髪を持ち上げて、そこに視線を向けながらわらう。

「なんとなく、や。男前は髪型変えても男前やろ?」

得意気な答えは師匠らしいと言えばそれまでなのだけど、覇気の無い声と自嘲するような笑みが、何かおかしい。
少しだけ身体を屈め、同じ高さの目線で師匠の瞳をじっと見詰めると、直ぐに逃げるように反らされてしまった。

「ホントに気紛れだけ、ですか?」

「……気紛れだけ、言うとるやん。それにホラ、最近暑うなって来たしなぁ」

明るく(どことなく態とらしくてぎこちないが)笑い声を上げる師匠に、それ以上何も聞いてはならないような気持ちになったから。
お似合いですよ、そう言ってこの話題は終わらせることにした。



(俺の結婚式からひとつきたった、その日。
師匠が髪を切った。)



***



090815

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