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あのひとと、あの野郎のことを考えるとおかしくなりそうになる。
そんなぼやきを、こいつに漏らしたのがそもそも間違いだった気もする。




「なら、狂っちゃえば良いんじゃねえんですか。大丈夫、あんた一人が狂人になるわけじゃないですし」

「…俺が一緒に狂ってやるから、なんて言ったら殺すぞ」

「まさか。ちゃんと身の程は弁えてるつもりなんで」





「俺が、先に狂って待ってます。堕ちてくるあんたを、下で受け止めてやりますから」





「意味わかんねえ。もう頭、おかしくなってんじゃねーの」

「ああ、そうかも。…なら、後はニクスさんを待つだけですね」

いつでもどうぞ。
そう言って笑顔で両手を広げるそいつを蹴り飛ばしてやろうか、と。脚を上げたところで、この馬鹿にはそうしてやる価値も無いな、なんて思って、黙って踵を返した。


***



090810

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