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馬鹿みたいに紙一重





見上げれば、夕暮れ、と呼ぶにはまだ少し早い、でも昼間のそれではない空の色。
ちょうど月の輝きはじめる時間のそんな空と同じ色をした眼を、アイザが伏せる。

「スコールは、強いな」

羨ましい、ぽつりと届いた呟きに、どう返せば良いのかわからなくて黙ったまま手元のアイスをかじった。口に広がる甘さと、それからほんの少しの塩味。
人気のない路地を抜けた先のここに居るのは俺達だけで、足元には俺のガンブレードと、アイザの大剣が。重なり合うように、転がっている。

「強くなんか、ないさ」
「強いだろ。今日も俺の負けだった」

喉を抜け、手合わせを終えて火照った体に染みる、冷たいアイスを。しゃく、と軽い音を立てながらまたかじる、合間に。やっぱり、ぽつり、ぽつりと続く会話。
俺もアイザも騒がしく喋るタイプではないからか、ふたりでいる時はいつもこうで、それが心地好い。ここにリアやユフィ達が加わればこうもいかないのだが、俺と剣を合わせる約束をしたときはいつもアイザはひとりで現れたし、俺もひとりで出掛けた。
ふたりきりで鍛練に励む理由なんて今まで理由なんて考えたことはなかったけれど、多分、なんでひとりなんだと聞かれたら。俺の建前は、騒がしいあいつらに邪魔されたくないから、だろう。そんな建前に隠された、本音は。鍛練の果ての目的がまだ、皆に知られるのは小恥ずかしいから、だ。
目的について話したことはないけれど、そんな俺に付き合い続けるアイザも、多分。

「…あんたは。どうして、強くなりたいんだ。街の奴らとちゃんばらをするならもう、十分強いだろう」
「多分、スコールと同じだ。もし、なにかがあったら。俺が、俺の力で仲間を守りたいから。…これじゃ、まだ足りない。背ももっと伸ばして、筋肉もつけて。これに見合うくらい、強くなってやるさ」

スコールが、それを完璧に使いこなせるようになる前に、な。そう笑いながらアイザが撫でる、その身の丈に合わない大剣と、まだ扱いきれていないガンブレードが。赤くなり始めた空の色を映すのを眺めながら、ふと思う。
誰かに言われたことすらないけれど、俺とアイザは根本の部分が似ているんだろう。そして、歩んだその先の未来も、もしかすれば、きっと。

見上げれば、赤く、切ない空の色。
その赤から、紫紺へ。徐々に色を変えていく空の縁に、ひとつ。
小さな星が瞬いていた。

***



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