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白い雪に映える、明るい緑の髪。
雪に負けないくらい白い肌を伝う、鮮やかな、緋。
俺の視界に広がる、嫌に綺麗なコントラスト。



一歩、踏み出した靴の下で小さく雪が鳴る。
鉛色の空から振り続くそれが止む気配は無くて、全て…例えば、その辺に散らばっている戦闘兵器の破片も、崩れた建物の残骸も。あと少しすれば何もかもこの白に飲み込まれてしまうんだろう、多分。
──また、一歩。
まだ燻っていた機械片が、どこかで爆ぜた音がした。そういえば、俺の足音以外の音がきこえたのは久しぶり、じゃないだろうか。
──……一歩。
また、無音に戻る世界。もしかしたらこの白銀は色だけじゃなく、音も奪ってしまうのかも知れない。あいつの、綺麗な声すらも。

「さみー……」

そう思わねぇ?津軽。
唇で形作っただけの単語の羅列は、何処にも届かない。胸の中で澱むだけ。
なぁ、こんなにも寒いのに。ちょっとの間此処に突っ立っているだけの俺の肩にすら、うっすら積もる程雪は降り続けているのに。どうして。

「なんで。お前、そんなトコで寝てんだよ」

なにを。馬鹿なこと言ってんだ、俺は。
そっとしゃがみ、夥しい緋と薄い白に覆われた肌に触れる。ああ、冷たい。こんなにも赤く濡れて、こんなにも冷えきっているこいつが、応えてくれるわけない、のに。
まだ俺は、これが悪い夢で目が覚めたらあいつとずっと一緒に過ごせる生活が待っているとか、せめて目の前のこいつがまだ生きていて俺の名前を呼んでくれる、だとか。そんな結末を惨めに、願ってる。

(こんな現実も受け入れられないような子供だったのか、俺は)

無意味に津軽の髪に触れながら、浮かんだ自嘲の念を直ぐに、打ち消した。
本当に、俺が子供だったら。こいつにすがって、泣けた筈だ。嘘だろうと、眼を開けと、誰の視線も気にせず喚きながら。
逆に、俺がもし、もう少し大人だったら。こんな時代だから、と。相対する者なんかに想いを寄せた自分が愚かだったんだと、全てを諦め受け入れられただろうか。
無邪気な子供にも、悟った大人にもなれない俺を嘲笑うように雪は、勢いを増す。





(二人で描いた未来は、なくなってしまったから)
何に、誰に祈ればいいのか判らないけどどうか、あと少し。二人きりで居させてください。



こいつが、雪原に沈むその時まで。





***



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