結婚って、なんだろう。
不意にそんなことを思いついて、かつての仕事仲間、今や結婚一年目の"先輩"の元へと駆け込んだ。


「ねぇ、お妙、どうして坂田さんと結婚したの」

「そうねぇ、うーん、銀さんと食事すると、何を食べてもおいしいのよね」

「やだ、ノロケ話」

「そうじゃないわよ。なんでも、ガツガツ食べるの。見てて気持ちいいじゃない。私、好き嫌いなくなっちゃった」


お妙の左手の薬指に光る指輪は、シルバー。プラチナは高価。だからシルバー。石もダイヤじゃない。それでもお妙は、それでいいと言う。
いつだったか私が、シルバーはくすむからイヤ、と言ったら、ちゃんと手入れすればキレイなままだし、ちょっとくらいくすんだって、逆に味があっていいじゃないの、と言った。

かつて猟奇的な料理を作っていた彼女は、もういないのだ。
今日出された献立もおいしかった。
鶏肉のソテー、レタスとコーンと豆腐のサラダ、お味噌汁、ご飯。


「でも、それって結婚の理由になる?」

「バカね、理由なんか最初から必要じゃないのよ。必要なのはきっかけ」

「きっかけ」

「嫌になることだって勿論あるけど、いいじゃない。ご飯がおいしければ」


成る程。正直なところ彼女の語る"結婚"にはイマイチ理解できないとこがあったけど、今彼女は幸せなのだ。

本人たちの前では、なんで銀さんなんですか、僕は認めません、なんて駄々をこねていた新八くん。私の前ではしおらしく、でも銀さんだったら絶対、姉さんを幸せにしてくれると思うんです、なんてこぼしてた。

やっぱり、結婚は難しい。
でも、なんでだろう。すごく恋しい。


「今日は、ごちそうさま。坂田さん帰ってくる前に帰るよ」

「そんなに気を遣わなくてもいいのよ」

「ううん。なんか、早く帰りたい気分なの」

「そう?」


例えば、相手の食事を見ているだけで幸せで、自分の好き嫌いもなくなってしまうような、そんな関係に憧れてしまったり、逆にまだ理解できなかったり。

私は、まだまだだなぁ。






ガールズトーク
今日は、二人の嫌いなものでも食卓に並べてみようかな。





「…なんだこれ、嫌がらせか?」

「晋助、あんたって本当に物事を斜めからしか見れないのね」

「真正面からみても充分嫌がらせじゃねェか。嫌いなもんだけ食卓に並べやがって。食えねぇよ」

「バカね、晋助が食べれないものは私も食べれないじゃない」

「あぁ、嫌いなモン同じだからな」


食卓で冷めていくそれらを見つめながら、あぁやっぱり結婚って大変だ、と思ったのはここだけの秘密。

だってお妙に言ったりしたら絶対、あんたバカでしょ、なんて言われるんだから。




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