棘は夢を見ている。呪言を必要としないまま先に寝入ったなまえの手を、たまらずにやんわりと握ったそのままで。
 畳は固くひんやりとしている。けれど寒さは感じない。繋いだ手が何よりも温かい。薄く、ぼんやりとまぶたを僅かに持ち上げてはみたものの、視界の暗さと微かに聞こえる寝息に、やはりまたことりと夢の中へと旅立った。

 棘は夢を見ている。
 いつかみんなの名前を呼んで、みんなに「おはよう」と言い、そして「おやすみ」と笑って一日を終える、たったそれだけの幸福な夢を。



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