「…あちぃ」

「そうですか」

「………」

「冷房はついています」


我が城の暴君な王様は、今日も今日とて不機嫌そうだ。何を言わんとしているのかもさっぱり掴めないし、掴もうとも思わない。冷房が低い音をたてる室内で、その暴君は今日も変わらず肌蹴たシャツを羽織っている。…お腹壊さないのかしら。


「…北極にでも行くか」


…この人、暑さで頭がヤられたのかしら。


「それは極端かと。もう少し近場で避暑を楽しんでいただけませんか」

「………海」

「あぁいいんじゃないですか、どうぞ皆様連れ立って行ってきて下さいませ」

「……テメェは」

「私は生憎執務がございます」


誰もやりたがらない書類仕事を一手に引き受けている身ですから、と皮肉を込めて付け足せば、暴君は高らかな舌打ちを打って無言で圧力をかける。

目を合わせずに手にとった書類は、誰かが壊した器物の修繕費見積もり。誰が壊したかなんて犯人探しをしても仕方がないことくらいわかっている。この城の住人は、こぞって金銭感覚がザルなのだ。


「…テメェ、隊服以外に服持ってんのか」

「いいえ、必要ありませんから」


白いシャツ、黒いスカート、黒いブーツ、黒いコート。模範的な着こなしは首もとまでしっかりボタンをはめてある。これは私の僅かな矜持。曰く、服装の乱れは心の乱れである。


「ハッ24時間隊服ってか?」

「えぇ、毎日着替えてはいますが、24時間隊服です」

「………」

「ご存知かとは思いますが、私は皆様が眠っておられるときにも執務に追われております」

「寝てねーのか」

「いえ、デスクに伏せて眠っております」

「…………」






沈黙の霹靂
あら、部屋の温度下がったかしら



「…これは何事でしょう、ルッスーリア様」

「何言ってんのよ!ボスがあなたを心配して連れてきたんじゃない!」

「ハワイにですか」

「今日は目一杯楽しみなさ、」

「あ、無理です。私太陽の下に出るとめまいが…」
「ちょ、ボスー!!!この子倒れたわよー!!!!!」




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