逃げるように去っていった背中を反芻して、靡いた髪の間に見えた赤い耳を思う。
思わずにやけた口元をとがめるような無粋な奴はここにはいないんだから、これっくらいは許されるだろう。


「…"あんたなんてだいっきらい"、ねえ」


ソファに深く腰掛けて完全に体を預けた。ギシリとあがった音が嫌に大きく響く。
今しがた去っていったばかりのなまえちゃんの体温と残像が残るリビングのソファに、年甲斐もなく、歯を食いしばった。


「おっさんのスイッチ、入れんなよ」


吐いたため息があまりにも湿り気を帯びた熱を持って、気まずさがむくむくとせり上がってきた。しかしそれを抑え込むのはあまりにも容易い。


「ラーメン、無駄にしちまうなあ」


伸びきって温くなったカップラーメン、空になったチャーハンの皿、なまえちゃんがくわえたスプーン。ここは紛うことなく電気が煌々とするリビング。
お誂え向きのティッシュが視界に入り俺を誘う。

さあ、どうしてやろうか。


「なまえちゃん、悪ぃな。いただくよ」


形ばかり、相手の必要ない宣言をすると同時に、乱暴にベルトのバックルを外す。
ボタンを弾いてチャックを下ろせば、まだ完全には勃ち上がっていないペニスがやんわりとパンツを押し上げていた。


「ははっ素直」


吐いた自嘲に、指先を這わせる。
なまえちゃんはセックスの時、どういう反応をするんだろうか。意外と素直に欲しがるのだろうか、それともやはり、形だけの拒絶を口にするんだろうか。
例えば「舐めて」と言ったら?


「…、はあっ」


パンツの上から擦るペニスは徐々に硬さと大きさを増していく。
いや、きっと「舐めて」と言っても一筋縄ではいかないだろう。だったらはっきりと言ってやればいいんだ。なまえちゃんの頭を掴んで、涙に濡れそうな瞳を無視して、笑って、「舐めろ」と。


「っあー、ちくしょう」


我慢ならずにパンツからペニスを取り出した。親指の腹で亀頭を撫でる。
なまえちゃんの舌先がこの先っぽに食い込んだらどんなにか熱いだろう。どんなにか気持ちいいだろう。
きっと舐めさせたら手が疎かになる。「手がお留守んなってるよ」そう言ってなまえちゃんの白く細い指が陰茎に絡み、上下に擦ればおっさんの理性なんて根こそぎ奪われるはずだ。優しくなんかしてやれない。


「く、ぅ、…っ」


親指でからめ取った先走りを全体に広げながら上下運動の摩擦を加えた。残念ながらこの手はなまえちゃんの手じゃねえが仕方ない。
じゅっじゅっといやらしい音が聴覚を犯す。それすら心地いい。


「あー、もっと、もっと、だ……」


声に出せば更に高まる。
舌先が尿道口を抉り、亀頭とくびれを丹念に舐めとり、右手では陰茎を扱く、左手で袋を揉ませてやろうか。


「…は、っ…あ、…やべ…」


扱くスピードを速める。
なまえちゃんの後頭部を押さえ込んで、あの口ん中に全部出したい。そんで全部、最後の一絞りまで飲ませて、丁寧に舌でキレイにさせる。


「はぁっ…!……、ぅ、……っ!」


我に返ってティッシュを鷲掴みギリギリセーフ。飛び出した精子はティッシュにおさまった。いまだにびくびくと微動するペニスが精子を吐き出している。


いずれ、必ず。
全部なまえちゃんの口ん中に出して、そんでなまえちゃんの子宮めがけて出してやる。

とりあえず今日のところは


「…はー…、ごちそうさま、なまえちゃん」



チープホワイト



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